グローバル・ツーリズム下でのイスラム教の移住者の増加と農村コミュニティの変容 : バリ島・デンパサール市近郊のプモガン行政村の事例
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概要
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本稿は、グローバル・ツーリズムのなかで大きく変容しつつあるバリを、地域コミュニティに視点を据えて捉えなおすことをねらいとする。1980年代後半のツーリズムの展開は、外国人観光客とともに、仕事をもとめて流入してくるインドネシア国内からの大量の移住者をもたらした。移住者の大半は、隣島のジャワやロンボックから来たイスラム教徒である。2002年の爆弾テロ後の観光業の低迷のなかで、治安維持を目的とする移住者の取り締まりが強化されている。本稿では、変化が顕著に観察できるデンパサール市郊外にあるプモガン行政村を事例に、イスラム教の移住者とヒンドゥー教の地元出身者との軋轢の背景について考察する。こうした問題の背景には、①近郊農村の急速な都市化と混住化、②アジアの通貨危機後にインドネシア全土で見られる失業層や貧困層の増加、③ツーリズムの展開に伴うバリ人の経済格差の拡大がある。また、④ポスト・スハルト体制における地方分権化も、排他的なローカリズムを生み出す背景として無視できない。こうした背景のもとで、バリ人の土地喪失の恐怖からくるジャワ人への対抗意識が昂じて、爆弾テロを契機にバリ・ヒンドゥーの排他的なローカリズムの文化運動(アジェク・バリ)が広がっている。グローバル・ツーリズムの波は、就労機会を拡大し、バリ社会を物質的に豊かにした。だがその一方で、インドネシア国内からのイスラム教の移住者とヒンドゥー教の地元出身者とのあいだの溝を広げ、バリの社会不安を増大させている。
- 2011-03-15
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