小学校理科A区分のカリキュラム・授業の検討--種子の発芽における水の働きの認識の2年間の追跡分析から
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概要
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第3学年から第6学年までの児童335人を対象に、自由記述法を用いて、種子の発芽における水の働き(第5学年の内容)に関する認識の実態を、同一児童を対象に一年の間をおいて二度調査し、関連する単元や授業及びカリキュラムの検討を行ったものである。その結果、(1)種子の発芽における水の働きの認識の実態は3郡8カテゴリーに分類することができ、(2)操作的時系列的依存関係による誤認識(「水が栄養」「飲み物」「枯れる」)がいずれの学年にも約7割前後認められ、乾燥に視点を置く認識や植物体内の栄養に視点を置く認識などは極めて少ないこと、(3)第5学年の学習内容に対応する望ましい認識は第5学年と第6学年においても極めて少なく、第5学年の学習を満足しているとは言いがたいなどの11項目の結果が抽出され、それらから以下のようなことが考察された。(1)種子の発芽における水の働きについての認識は、第3学年から第6学年までのいずれにおいてもこの一年間ほとんど変わっていないと言え、また第5学年の種子の発芽の学習後も、種子の発芽における水の働きと、発芽後の水の働きの差違異同の認識が十分ではないことが指摘できた。(2)発芽における水の扱いとその後の生長における水の扱いについてのカリキュラム上の位置付け方と、授業での扱い方の知見を得ることができた。(3)本来のカリキュラムが意図している児童の変容とは異なる児童の変容を結果としてもたらしている隠れたカリキュラムの存在の検討が今後の課題として求められた。(4)文化の生産・変容や社会貢献として生きてはたらく知の総合や活用のし方を支える価値判断・意思決定の能力・態度形成のための、新しい理科の授業の創造やカリキュラムの創造が急務と言える。
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