数学理論に対する個別超準化法Ⅰ
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概要
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超準解析( Nonstandard Analysis )はAbraham Robinsonの考案になる画期的な解析法であるが、一面、かなりの程度わかりにくい理論でもあると見なされてきた。事実、創始以来ほぼ半世紀を迎えようとする今日なお、この理論が広く普及しているようには見えない。本論において我々は、‘数学理論の記述に関する新たな枠組み’を用いることによって、超準解析の分かりやすい導入を試みた。ここで述べる個別超準化法の特徴は、つぎのような点にある。(1)それぞれの数学理論を、定義・公理・命題・条件その他さまざまな種類の記述の集まりととらえる。(2)これらの記述を、おのおの"数学的対象"と"記述形式"とに分解する。(3)そこで用いられている数学的対象のそれぞれを-せいに超準化し、そのあと、それに合わせて各記述形式を超準化する。なお、ここで"記述形式"と呼ぶのは、それを記述するのに用いられた不定の数学的対象のそれぞれに具体的な対象を代入したとき、何らかの意味をもつ命題-と変わり、その真偽が定まるような記述のことである。その際、記述形式の構成のしかたや記述された命題の具体的意味、さらにその真偽などは、それぞれの数学理論に属することがらであり、超準化法はそこに立ち入らない。個別超準化法が前提とするのは、自然数や実数についての通常の知識のほかは、無限集合における超フィルターの存在だけである。それも、 Zornの補題を用いて簡単に証明されるので、本論が述べるのは、予備知識を必要としない超準解析導入の方法といえよう。このように、 ZFC (Zermelo-Fraenkelの集合論に選択公理をあわせたもの)の知識を求められない点は、個別超準化法の学びやすさにつながるものと思われる。
- 2008-09-30
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