先端医療としての遺伝子治療 : その可能性と限界,そしてこれから成すべきこと
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概要
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「遺伝子」という言葉には,何かしら「触ってはいけないもの」という意識が付きまとうようだ.これは遺伝子の本体である「DNA(デオキシリボ核酸)」という化学物質に生命の設計図が刻まれているという事実が,神秘な雰囲気を醸し出していることに基づくからであろうか.一般臨床医でさえできれば避けて通りたい,この「遺伝子」なるやっかいそうな相手に,いわんや患者さんはある種の不気味さを感じるのは致し方ないことであろう.遺伝子診断・遺伝子治療に関する議論には, 得てしてロジック以外の要素が入り込みがちであるが,恐らくは,この心理的な要素も十分に影響しているように思われる.ところがいざ研究室で遺伝子を扱い始めてみると,実験室での遺伝子はさしたる難物でもない.研究方法としては,「混ぜて,回して,暖めて」の繰り返しで,適当なところで中断できるし,うまくやればいくらでも自由自在に増えてくれる.このように遺伝子は研究対象として扱いやすく,だからこそ「ヒトゲノムプロジェクト」などという途方もない研究が予想以上のスピードで進んだのであろうと考えられる.「遺伝子治療」とはその遺伝子の機能を修飾することで病気を直してやろうという,ある意味で究極かつ先進の治療概念であるが, それを実行するための技術レベルはまだまだ未熟な段階である.この度,「遺伝子治療について判りやすく解説せよ」と下命を頂いた.我々の遺伝子治療に対する考え方,そして我々のグループが現在開発を進めている全く新しいベクターを,歴史の中での位置付けを踏まえながら整理するよい機会でもある.先輩諸氏の暖かい御寛容を賜れれば, 誠に幸いである.
- 2004-04-25
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