モール夫人への手紙にみるナイチンゲールの女性観
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概要
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一般的に手紙は自己開示と思えるほど自己の真実を他者に伝えることができるものである。本論はナイチンゲールの書いた手紙を彼女自身の語りとして捕らえ,その内容を質的研究法で内容分析を試みたものである。モール夫人著『マダム・レカミエ』に対するナイチンゲールの反駁に関する限り,両者間の見解の相違の第一は経験から語る,つまり,真実から語ることと伝統的な慣習で語るという問題が含まれていた。第二の論点は女性の共感性の問題であり,第三の論点は女性の共感の寄せ方にあると考えられた。こうした論点から手紙の内容は,マダム・レカミエ論というより,マダム・レカミエを素材にしたナイチンゲールの抱く女性観であると考えられた。ナイチンゲールは,“女性の特性は,他人に対して共感する傾向が強い”とのモール夫人の考えは“全く慣習的な考えであり,自分の経験から述べるとすれば,真の共感とは,誰かに感化されて生きかたまで変えることである。自身の経験からすればそれができたのは女性たちではなく男性たちである。ゆえに,真の共感は男性にある”と主張した。