奈良奉行川路聖護の植樹活動について
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概要
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享和元年(一八〇一)年に生まれ、立身出世して幕末政界で人間味あふれる活躍をした川路聖護は、慶応四年(一八六八)の江戸城開城の日に自殺して果てた。江戸幕府にもっとも忠実な官僚であったといってよい。この川路聖護の事蹟については、四番目の妻さととはじめた夫婦交換日記以来の膨大な日記風近況報告の書簡があって、これによって個人的な喜怒哀楽や政治担当者としての悩みや苦しみも含め、生き生きとした歴史叙述が自らの筆で今日に伝えられている。そして、その多くは『川路聖護文書』全八冊のかたちで公刊されている。川路聖護の伝記としては、川田貞夫氏の『川路聖護』がすぐれている。川田氏は早くから川路聖護に注目され、実に詳細にその事蹟をわかりやすく解説されている。惜しむらくは、その著書が公刊されるよりも早く平成七年に川田氏が亡くなられたことである。奈良奉行川路聖護については川田氏の著書で詳しく論じられており、また『奈良市史』通史三でも若干記述されている。私もかつて「遠国奉行の着任と離任-奈良奉行川路聖護」および「奈良奉行川路聖摸の民政』の二論文で部分的に言及したことがある。本稿では、川路聖護の奈良における事蹟のうち、とくにいわゆる奈良公園の植樹事業について考察しておきたい。この植樹事業についても、『奈良市史』通史三および川田貞夫氏『川路聖護』でもとりあげられているのであるが、単なる事蹟の紹介だけでなく、植樹事業の分析を通して、名官僚川路聖護が奈良において成長したこと、奈良が川路聖護を育てたことに言及しようと思う。
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