Syria Palmyra 石造遺跡群の風化状況
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概要
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パルミラPalmyraは、シリアサバク中央部のオアシス都市として紀元前1~3世紀にかけて繁栄した。メソポタミヤと地中海とを結ぶシルクロードの中継地であったが、274年のローマ軍との戦いに敗れて廃都となる。その後12~14世紀にかけてビザンチン時代に再興が進んだものの、16世紀オスマントルコ時代に入り急速に崩壊し、近年の発掘まで放棄されたままの状態であった。しかし都市遺構の規模が雄大で、石造建築物もかなり残存しており、特にベール神殿や延長1300mに達する石造列柱付きの大通りには750本あった列柱のうち現在も150柱の石灰岩からなるコリント式円柱が林立している。このため貴重な歴史遺産を残す地域として1980年にユネスコの世界文化遺産に指定された。ところが、これらの石造建造物も年月の経過に伴なって徐々に風化し破壊されてきている。特徴的な風化作用には、主として地表より上部で進むTafoni化と地表下では石灰岩の場合溶蝕Corrosionがあげられる。パルミラの場合は、極乾のサバク中であるためTafoni化は進んでいないが、遺跡の建造物が石灰岩であるため、地表直下を中心にCorrosionがかなり進んでいることがわかった。それにはこの地域が山地に近い扇状地に位置しているため、廃都後は時折発生する降雨による布状洪水Sheet floodにより搬出されてきた砂礫によって徐々に堆積が進んできており、現在遺跡群の中心部付近では約150~200㎝程埋(没)積していることがわかった。さらに、石造遺跡の埋積状況と溶蝕との関係を発掘現場で観察・計測できた。その結果風化破壊の速度が極めて早いことがわかったので、実態を中心に報告する。
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