唐律における「部曲」について
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概要
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唐代の身分制,就中,良賎制をいかに把えるかは古くて新しい課題と言えるが,浜口重国氏の大作『唐王朝の賎人制度」(東洋史研究会,1966年)完成以来,良賎制理解は史料的にも構造的にも新しい次元に到達したと考えられる.以後,関連分野の研究は浜口氏の業績を抜きにして考えることはできない.しかし,そこには未だ検討さるべき問題が残されていることも事実であり,実際少なからぬ論争があること周知の通りである.この論争の主要な論点の一一としてあるのが,かの上級賎民たる「部曲」をどう見るべきかという点である.もとより,「部曲」は唐律の身分体系を特徴づける存在と言っても過言ではないほどの歴史的性格を帯びている.それ故,この「部曲」をいかに位置づけるかという問題は,唐代或いはその前後の中国社会を考える場合,避けて通れない問題でもある.小稿ではかかる問題意識から「部曲」に関していささかの考察を行なってみたいと思う.ところで,この「部曲」を奴隷範疇で把えるか,農奴範疇で把えるかは従前よりの主要な論争点であった.そしてこの論争は,当該段階の社会構成を如何に考えるのか,さらに当時の中国史像をどのように構成するのか,など時代区分論にも影響する重要な論点であるが故に,絶えず注視を受けてきたのであった.しかし,その議論は十分かみあわず平行線を辿るかの如くに思われる側面もないとは言えない.その原因の一つとして,決め手ともなるべき史料が残されていないという事実があることも亦周知の通りであり,今後別の角度からの検討が要求されよう.かかる事情より,小稿では,かかる史料の問題は暫く措き,唐代乃至は唐宋変革期における土地所有・経営の展開をより深く把えようとする立場から,「部曲」をめぐる論争点に若干の整理・検討を行なってみたいと思う.ただ,さし当っての考察の主眼は,紙数の関係もあるので,唐律及びそこに表現された「部曲」の法的位置をどのように理解するかという点に絞り,今後の研究の足がかりとしたいと考える.
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