猪苗代湖の開発
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概要
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一般に湖沼開発とは,湖沼をダム化して農業用水・工業用水・発電用水・上水道用水のための水資源を確保することだと受けとられがちで,この考え方にそう研究は多い・しかし筆者は,この水資源を確保するという考え方の他に,治水・他の水利用・土地造成という概念もそこに含ませたい.つまり,湖沼に流入する河川や湖沼から流出する河川,および湖岸の干拓・埋立ということがまずそれである.他に前述の水利用とは多少質は異なるのであるが,水運・漁業・観光という水利用形態も含めるのである.それら全てを対象とする湖沼にかかわる開発を,本稿では湖沼開発と考えたい.このような観点に立つ研究は二・三あるが,それらは琵琶湖という大きな湖を扱っているため概略的な記述にとどまっている.猪苗代湖の開発に関しては佐川敏夫,新沢嘉芽統,渡辺哲男の研究が主なものである.佐川は湖水位低下問題に触れ,新沢は湖の開発に大きくかかわった安積疏水と湖水位低下を,渡辺は湖の管理をめぐる抗争を扱っている.いずれの研究も湖の水位低下に伴う問題を中心にしており,この点は湖沼開発の他の事例とかなり共通する.一般的には湖沼の水位の変動に伴って,港・舟だまり,漁業,利水施設,湖周辺の井戸などに対する影響などが生じ,極端な場合には水害がおこることが指摘されている.そこで本稿では,まず猪苗代湖およびその周辺の概観と水利用の概観に触れ・湖の開発の歴史をたどってみたい.しかる後に,この湖の管理に大きな影響力を持つ安積疏水について,そこに至る経緯と他の組織との対応について述べ,最後に湖の水位低下にからむ諸問題を検討してみたい.なお筆者は,猪苗代湖およびその集水域に於ける水利用については既に発表しており,それを参照していただけると幸いである.次章は,本稿の理解をしやすくするために,前稿の一部を要約した形で述べる.
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