猪苗代湖およびその集水域に於ける水利用
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概要
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ある地域に於ける水の賦存量およびその利用システムの解明は,その入れ物である土地の研究と同様に,地理学にとっては重要な課題であると考える.水の賦存量は水収法で求められようし,水利用システムは個々の水利用に関する詳細な検討から明らかにすることが出来よう.そこで本稿では,水収支研究の基礎的なデータを提供するという目的を持った水利用の解明に関する検討をおこなった.狭義の研究地域は第1図に示したように,猪につばし苗代湖およびその集水域で,猪苗代湖から流出する唯0の自然河川・日橋川に於ける東京電力㈱猪苗代第1発電所の取水堰地点より上流域とし,その流域面積は約832km2とする.しかし後述するように,猪苗代湖およびその集水域の水は一部,用水によって郡山盆地や会津盆地にもたらされているので,それらの地域も含め広義の研究地域として扱わなけれぽならない.研究の方法は,水利用形態を農業用水・発電用水・上水道用水・工業用水・漁業・水運・観光に分け,現地調査を中心に出来るだけ生の長期間に於ける既存のデータ(歴史・使用水量・移動システム・他種水利との関係など)を求め,その検討を主な内容とする.ただし,なかには測定値のないものもあり,許可水量を使用せざるを得ない場合もあったし,精度の良否も関係し必ずしも同一のレベルで論ずることが出来なかったものの,精度の良否は判断できるようにした.使用水量,あるいは取水量については,長期間の月毎の平均というデータを集収したが,本稿では長期間の平均値で表現し,単位はm3/dayで統一した.さて,水利用に関するこれまでの研究では,単一あるいは少数の目的の水利用を中心に扱ってきており,しかもそれらの間に有機的な関連が認められないものが多かった.そこで本稿では,前述のように水収支に関する別稿を作成するという目的のもとに,多くの水利用形態についてそれぞれ量的に把握し,また水利用を総合的にとらえようと努め,しかもそれらの間に有機的な関連を持たそうと試みたもので,その意味ではこの研究の意義は充分にあろうかと考える.また,非常に多くの水利用形態を持つ,猪苗代湖およびその集水域を中心とする広義のフィールドは,この目的には好都合であると言える.なお,フィールドの概観については,本文でも若干触れているので,枚数の都合上,割愛した.別稿において詳細に述べる予定である.
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