古代染色の化学的研究 第10報古代欝金染について
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概要
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ウコン(Curcuma longa Linn.)はショウガ科(Family Zingiberaceae)こ属する熱帯植物である.東南アジア地方が原産地と見なされている.ウコンの地下茎を掘り採取して,古代文明国では医薬(止血剤),染料および香辛料として多目的に用いた.染料としては黄色染めに使い,古代メソポタミアにおいては,さらに藍との交染で緑染めを行なった.古代エジプトも1500BCの墳墓から染布が出ている.古代の近東諸国においてウコンをIndian Saffronの名で呼んだ.このことからインドから伝来したと考えられる.東南アジアのイネ栽培国では,ウコンを染料,医薬として用いるのみでなくカレー粉(Curray Powder)を造り愛好して現在に至っている.ウコン色素の構造研究は,欧洲の化学者達によって今世紀初頭に究明され図1の構造式が与えられクルクミン(curcumin)の名が付けられている.またこの黄色素はアルカリによって赤変し,酸によって黄色が冴えるので試験紙として用いられている.ウコンはクルクミンのほかに,油,でんぷん,ペクチン質が含まれることが従前の研究で知られている.本研究は染着因子である水溶性成分の吟味,黄色染めと,藍との交染による緑染めの条件および金属塩の媒染効果を知る目的を以て行なった.
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