耐塩性酵母の生成する揮発性成分量と培養期間との関係
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概要
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耐塩性酵母のSaccharomyces rouxii S 84とTorulopsis versatilis D-5の培養経過に伴う生育とグルコースおよび窒素の消費について調べ,更に香気の観察と揮発性成分量の変化について検討した。1)S.rouxiiは1日目から3日目にかけ急速に生育し,7日目に生育度が最高に達した。T.versatilisは7日目から10日目にかけて比較的急速な生育が認められるものの,生育の速度はS.rouxiiよりかなり遅く,20日目まで徐々に生育しつづけ,最終的にはS.rouxiiの生育度にほぼ近づいた。グルコース及び窒素の消費率の変化はほとんど生育曲線に対応し,S.rouxiiとT.versatilisのグルコース消費率はそれぞれ7日目と15日目に98%近くに達した。窒素の消費に関してはグルコースのように急速な消費は認められなかったが,生育の増加にほぼ対応していた。2)培養液の香気の観察の結果,S.rouxiiにはさわやかな,軽い清酒様香気と甘い果実様香気が認められ,T.versatilisには重い感じの清酒様香気と弱い醬油様および漬物様の香気が認められた。両菌株とも培養期間に伴い香気が強くなり,次第に重い感じの香気に変化した。また,培養後期にはエタノール様の刺激臭や自己消化様の臭気も観察された。なお,培養液をpH2に調整し得られた留液の方がpH7で得られた留液よりも培養液の香気を再現していたので,酸性物質およびエステル類の培養液の香気に対する重要性を考察した。3)揮発性成分は培養液をpH2に調整し,減圧蒸留により水とともに補集した。定量を試みたののは総アルコール,フーゼル油,総アルデヒド,アセトアルデヒド及び揮発性有機酸で,これら成分量の培養経過に伴う変化はグルコースや窒素の消費傾向にほぼ対応していた。すなわちグルコースや窒索の消費率が最高に達した期間が揮発性成分量も最も多い傾向にあった。ただ,アルデヒド類は他の成分に比べ,やや早い期間で最高値に達した。以上のことから,耐塩性酵母の生成する香気について研究を進めるにあたり,培養期間を設定する場合,炭素源がほぼ消費しつくされた期間にすることが,使用菌株に対し一律に規定するよりもより妥当と考察した。本研究の遂行にあたり,実験に御協力いただいた本学の山田正子さんに深く感謝致します。
- 県立新潟女子短期大学の論文
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