雪室貯蔵ニンジン'ひとみ5寸'の香気成分
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概要
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試料の雪室貯蔵ニンジン'ひとみ五寸'(以下、'ひとみ五寸')は、圃場より収穫後シートなどで密封し、その上を2~3mの雪で覆った雪室の中で約3ヶ月半貯蔵されたものを用いた。また、'ひとみ五寸'の対照として、全国的に一番多く栽培されている品種・'向陽2号'ニンジン(徳島県内産、以下、'向陽2号')を選んだ。香気成分の分析は各ニンジンの香気成分のジクロロメタン抽出物を用い、常法に準じて、ガスクロマトグラフィー(以下、GC)およびガスクロマトグラフィー-質量分析(以下、GC-MS)によって行った。GCおよびGC-MS分析の結果、'ひとみ五寸'および'向陽2号'の香気成分として、それぞれ48、41化合物、総数として61化合物を同定し、これらのうち45化合物は著者らが初めてニンジンの香気成分として検出した。ニンジンの香気成分量の指標となるピーク総面積値は、'ひとみ五寸'の方が大きく、'向陽2号'の約1.6倍であった。各ニンジンの主なる香気成分として、両ニンジンに共通していた化合物は、β-caryophyllene、cis or trans- γ-bisabolene、trans-α-bisabolene、caryophyllene oxide、α-humulene、(E)-1,2-dichloroethene、geranyl acetone、chloroformなどであり、量的にはtrans -a- bisaboleneを除き、'ひとみ五寸'の方が'向陽2号'を上回っていた。'ひとみ五寸'のβ-caryophylleneは'向陽2号'の約2.1倍であり、その占める割合は'ひとみ五寸'および'向陽2号'共に最も大きく、それぞれ37.9%、28.0%であった。そして、β-caryophylleneに次いで多かったのがcis or trans-γ-bisaboleneで、'ひとみ五寸'および'向陽2号'に占めた割合は、それぞれ11.4%、15.3%であった。逆に'向陽2号'が上回ったtrans-α-bisaboleneは'ひとみ五寸'の約2.3倍で、その占める割合は12.7%であった。一方、'ひとみ五寸'にのみに同定された化合物は20あり、そのうちpropanol、isobutanol、butanol、2-methylbutanol、3-methylbutanol、heptanol、cuminyl alcoholのアルコール類が7種類と、ニンジン香気への寄与率が高いとされているoctanal、(E)-2-nonenal、(E)-2-decenalのアルデヒド類が3種類検出され、'向陽2号'に比べ大きな特徴を示した。また、'ひとみ五寸'ではβ-caryophylleneと共にmildでperfumy、すなわちマイルドで、芳香な香気を与えるとされるterpinoleneが認められたが量的には少なくその割合は0.1%であった。逆に、ニンジンの香気で青臭さを与えるとされるsabineneとmyrceneは、'ひとみ五寸'および'向陽2号'では共に検出されなかった。一方、'向陽2号'のみに認められた化合物は13で、そのうちアルコール類は3-methyl-2-buten-1-ol、octanol、dihydro-β-ionol、trans -nerolidolの4種類で、この13化合物のうちにはアルデヒド類は検出されずひとみ五寸との違いであった。なお、アルデヒド類の中でも最も有力な香気成分とされる(E, E)-2,4- decadienalに関しては、'ひとみ5寸'および'向陽2号'、それぞれ0.5%、0.1%認められた。また、ニンジンのエッセンシャルオイル中でその存在が珍しく、快い甘い芳香を持つというgeranyl 2 - methylbutanoateが向陽2号中で0.7%検出された。そして、各ニンジンでのみに認められた化合物の占める割合は、'ひとみ五寸'のelemicin (3.1%)、acetoin (2.0%)を除き他は全て1%未満であった。また、生ニンジンの香気成分の低沸点化合物として、dietyl ether、acetaldehyde、acetone、propanal、methanol、ethanolなどが報告されているが、これら化合物のうちacetoneのみが両ニンジンのジクロロメタン抽出物中で同定されたことから、低沸点化合物の分析には溶剤抽出法よりもヘッドスペース法の有利さが示唆された。謝辞 実験にご協力をいただいた本学の坂内弘子氏と本研究への社員の参加にご理解とご協力をいただいた、高田香料株式会社代表取締役社長高田正二氏に深く感謝申し上げます。
- 県立新潟女子短期大学の論文
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