襦袢着型(一部式)刺子資料の分析 : 国立民族学博物館収蔵標本による(3)
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概要
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1.資料についての情報(1)ここであつかう刺子衣資料は,被覆部位はいずれも軀幹部であり,分類では襦袢型6点と長着型1点(いずれも一部式)の7点である。(2)採集は,7点とも京都や大阪の専門業者から入手したものである。(3)呼称は,野良着が5点と,刺子上衣,刺子仕事着が1点ずつである。2.資料の分析a.形状(1)本資料の構成要素は,6点が身頃,袖,衿から成り,1点だけが,身頃,袖,衿,衽から成っている。(2)衿は,本衿襦袢型が2点,かげ衿型が3点,別衿襦袢型が1点,長着衿型が1点である。掛け衿は3点あった。(3)袖は,巻袖が6点,野良着の1点だけが舟底袖である。(4)馬のりは,7点とも無い。(5)つけ紐も,7点とも無い。(6)資料の寸法①丈については,最少値99cm,最大値122cmである。②裄丈は,最少値58.5cm,最大値62.5cmである。b.材料(1)織布の材質と柄,染め色①素材はいずれも木綿布であり,組織は平織りが大半であるが,衿に朱子織の布を使ったものが野良着に3点ある。②表布の糸密度は,経糸は〔19本/cm〕から〔32本/cm〕まで,緯糸は〔17本/cm〕から〔27/cm〕までである。③布の厚さは,1mmから7.7mmである。④合わせ布の枚数は,2枚から5枚であるが多く重ねたものが多い。ただし1点,帆布のため1枚だけのものもあった。⑤布の重さは,760g~1560gである。⑥表布の柄模様は,紺地に小・中絣,草花絣などの緋が多く4点,紺地の絣と型染が1点,青無地と紺無地が1点ずつであった。なお表布は2種類用いたもの5点,3種類2点である。⑦裏布は,縹,浅黄の無地のもの3点,茶の細縞のもの2点,縞と無地のもの1点,裏地のないもの1点である。(2)刺子糸,縫い糸の材質と色①刺子糸,縫い糸いずれも木綿糸であるが,両者は必ずしも同じ糸ではない。②刺子糸は,いずれも右撚りであり,縫い糸もいずれも右撚りである。③刺し糸の色は,野良着は5点とも白であり他の2点は藍色である。刺すために用いる糸の本数は1本どりは2点,2本どりが5点である。④縫い糸は,黒糸と白糸を併用したもの4点,黒糸のみ2点,黒糸と紺糸のもの1点と,度重なる補修の様子がうかがえる。⑤刺し方は,縦刺しが野良着の5点,他の比較的新しい時代のものと思われる衣類である2点は,すくい刺しで,装飾的な模様刺しである。針目は,縦刺しは〔10針目/10cm〕から〔15針目/10cm〕でその間隔は〔17本/10cm〕から〔40本/10cm〕と細かい。すくい刺しの針目は〔40針目/10cm〕から〔60針目/10cm〕である。b.縫い方と裁ち方(1)縫い方①縫い方は,合わせ縫いだけで縫ってあるものは3点,合わせ縫いと伏せ縫いを用いたもの4点である。その縫い目は,合わせ縫いは〔7針目/10cm〕から〔12針目/10cm〕であり,伏せ縫いは〔4針目/10cm〕から〔8針目/10cm〕であった。②へりとりの様子は,袖だけのものは野良着の5点であり,袖,衿下,裾にあるものは2点である。(2)裁ち方①布幅は,6点が33cmから35cmで,1点が62cmで,これは広幅物の帆布である。②表布の用尺は,広幅布のものは並幅の袖,衿を入れても480cmと少なく,襦袢型の5資料は550~680cm,一部式の衣類にしては用尺が少ない。衽つきのものは750cmであった。
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