行為の原因・責任の根拠としての「意思責任」という幻想
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概要
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「意思責任」とは、意思することに対する責任という意味ではなく、個人がなす行為の原因を意思(intention)に求め、かつその行為の責任を行為者の意思(intention)に帰する信仰を意味して私が作った言葉である1)。通常、社会的に悪とされる行為が為された場合、われわれは当人の意思にその責任を帰する。その人物が他にも行為できる可能性があったのに、敢えてその行為をなそうと決意したこと、すなわち心的状態としての意思に、その結果の責めを帰するのである。しかし、そもそも行為者の心理過程を覗けばそこに確固とした意思を発見できるという考え方、そしてそこに責任を帰属させるやり方は近代法の個人責任--個人は他人の行為に対して責任を負うことは無く、自己の行為についてのみ責任を負う--の原則を基礎としており、それは当人の意思以外の責任を免除する近代的な装置なのである。紙幅の関係上、意思責任と近代法との関係について詳述することはできないが、本稿では、意思とは何か、そして個人の意思に責任を引き受けさせるというあり方がどのような帰結をもたらすのかを示したい。
- 2010-09-30
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