島村抱月「情」の美学の構想(一)
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概要
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「島村抱月『審美的意識の性質を論ず』の論理構造(一)―(四)」(本「紀要」一一一―一一四号)及び「『新美辞学』の検討(一)―(三)」(本「紀要」一一五―一一七号)でも検討したように、「審美的意識の性質を論ず」から『新美辞学』に至る島村抱月の美的現象及び美意識の理論的探究を貫くのは、「情」という意識の、能動的主体的機能に注目しながら、独自の美学理論の構築を試みるという課題である。しかし、『新美辞学』の、とりわけ第三編「美論」が、「審美的意識の性質を論ず」における、「情」の機制の観念論的――所謂「現象即実在論」的――説明から脱し、実験心理学の成果を組み入れながら、美的現象の解明に経験論的にアプローチするというスタンスを明瞭にしはじめていたのも前稿でみたところだ。この変容は、言語における「修辞現象」の美学理論の枠組みのなかでの理論的解明という実践的課題の強いるものでもあったが、同時にまたそこには、一八九〇年代後半の日本における、というより、観念論(「純理哲学」)的構成から経験的・実証的方法へ、抽象理想説から具象理想説、「上からの美学」から「下から」のそれへ、美学から芸術学へという、一九世紀後半から二〇世紀初頭にかけてのヨーロッパの、美的現象をめぐる言説のパラダイムの転回という事情も関わっていた。本稿では、これまでの考察を踏まえ、世紀転換期ヨーロッパにおける美学理論の転回との同時代的連関性のもとに形成された日本の文学思想状況を視界に収めながら、抱月の理論的探求の総括的な評価を試みる。
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