作業療法士と医療・福祉職種との関係 : 2000年作業療法士意識調査から
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概要
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本稿の目的は、作業療法士の4領域における役割を抽出するものである。作業療法士とは病院や施設でリハビリテーションを実践している医療・福祉の一職種である。4領域(分野)とは対象者の違いによって区別されるもので、身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害分野である。身体障害者とは、病気や事故などにより身体機能に障害をもった人たちに対して、身体の機能回復訓練や日常生活活動援助をおこなう領域である。精神障害分野とは、こころや精神に起因する疾患により日常生活や社会生活を送ることが困難な人たちに対して、健康な部分に働きかけ、社会関係技能を習得できるよう援助をおこなう領域である。発達障害分野とは、周産期から18歳くたいまでの心身の発達・成長期にあって、病気や事故により障害を受けた子どもに対して、発達の促しや生活面の援助をおこなう領域である。老年障害分野とは、加齢にともなって発生する心身両面の障害をもつ高齢者に対して、人的・物的環境整備をおこなうことで心身ともの改善を促す(浅野・守口 2003)領域である。このように分野における対象や援助が異なることから、作業療法士の果たすべき役割は多様であると考えられ、分野別の役割を明らかにすることが本稿の目的である。社会学では、役割とは、社会構造における地位にふさわしいと期待されている行動とされている。ここでいう医療・福祉職種の役割とは、対象者のニーズを各職種間で分担した役目であり、共通して実施している事柄もあるが、特定の部分は特定の職種に委ねられている事柄をさす。医療・福祉領域の各種専門職は、それぞれの異なる役割を担っているからこそ異なる専門職であり、そこにプライドをもち、行為できるのである。病院や施設に複数の専門職が存在し、単に同じ日常生活行為の援助をおこなっているだけだとしたなら、何ら異なる専門職である必要はなく、単一の専門職で事足りるであろう。最終的には各専門職間で分担した作業療法士の役割について明らかにしたいと考えているが、今回は全国の作業療法士に質問紙調査を実施し、所属している組織における人間関係からその構造を明らかにし、地位に付随した役割を明確にする。作業療法は、障害や疾患を持つ人の身体や精神を含む個人の内部へと向かい、その機能や不調の改善をはかることで生活の再獲得を図るという方向性と、その反対に、現在の障害や疾患を抱えながら、それらを前提として外部環境を変えることで生活を再構築するという方向性をもっている。つまり、一つには近代医学による構造主義に立脚した医療と、もう一つはプラグマティズム(実用主義)に依拠した福祉の二つの範疇が存在(Hooper & Wood 2002)しており、作業療法の内外部からの分かりにくさを通じている。実際の現場において、作業療法士はこれら両方の範疇に基づいて障害者・高齢者に対処している。しかし、その根拠になっている範疇の相違について認識は乏しく、さらに作業療法の「作業」の定義についても曖昧なものがあるため、対象者や他職種に対して作業療法の全体(「作業療法とは何か」)を説明しにくく、自身をもてない状況が生じている。そのため臨床現場において作業療法が人々の役に立つ療法であることを確認し、自らの役割に自身をもつことができるようにすることが重要であると考え、4分野における作業療法士の役割を明確にする。
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