笠岡湾干拓ヘドロ地の土層改善に関するライシメーター試験 特に干陸8年後の土壌物理性について
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概要
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笠岡湾干拓地海底ヘドロを充テンしたライシメーターを用いて,地表排水開始(干陸)後8年を経過した乾燥風化土について各種土壌物理試験を行ない、その結果を干陸後2年の未風化土の結果とも比較しつつ検討し考察を加えた. 大略の傾向としては,土地の使用状況が水田的であるか畑地的であるかによって到達される土層状態に差ができることである. 即ち,排水乾燥の面からは畑地的利用が有利であるが、除塩の面からはタン水条件を与える水田的利用が有利という正負の関係にあり、両者の複合的な推進による土層改善が必要であろう. 以下に干陸後8年間を経過し,乾燥及び除塩の両面で十分な改良がはかられた,畑地利用のN0.5区の結果をまとめて示したが,これは今後の干拓地における土層状態の到達すべき目標値的なものである. (1)含水比は5cm深で22%,45cm深で71%とよく乾燥し,乾燥密度も0~40cm層で1.0g/cm3を越える十分な風乾作用を受けていた. (2)コンシステンシーの結果からは,液性限界が30cm深まで初期状態の風乾土の値にまで低下し,作土層として十分な改善がはかられた. (3)pF試験においては,乾湿の履歴にともない団粒化が進み,土壌物理性が変化したため保水性はヘドロ性を脱却し、作物の生育に適した水分環境となったことを示した. そしてこれは,透水係数の増大と地下水位の低下からも実証された. (4)コーン指数による地盤支持力の判定は、大型機械の走行に十分耐えうることを示した. そして土層状態も,グライ層が50cm以深で完全酸化層も0~20cm厚であることから,8年間に強い土層改善がはかられたことがわかった. (5)塩分濃度は,深さ50cmまで全層にわたり1mΩ/cm以下に低下し、普通畑に遜色ない生産力を有する土壌に改善されたことが示された. 最後に,本研究の遂行に当り多大の御協力を頂いた,農林水産省笠岡湾干拓建設事業所関係各位に謝意を表する。