The Children of Green Knowe : 「聖なる時間」の物語
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概要
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イギリスは古い建築物への愛着が強い国である。それは、中世の荘園領主が邸宅として建設したマナー・ハウス(manor house)が、個人の住宅のほか、スポーツ施設や宿泊施設、マンションなどの形で今なお残っていることにもよく表れている。長い歴史をもつ場所のイメージとして、マナー・ハウスはしばしばイギリスのファンタジー作品にも登場する。『時の旅人』(A Traveler in Time,1939)や『トムは真夜中の庭で』(Tom’s Midnight Garden,1957)、そして、『グリーン・ノウの子どもたち』(The Childrenof Green Knowe,1954)などが好例だろう。『時の旅人』『トムは真夜中の庭で』はタイムファンタジー(以下、TF)である。『グリーン・ノウの子どもたち』はTF ではないが、「時間」をテーマにしている点は他の二作と共通している。この小論では、『グリーン・ノウの子どもたち』に、どのような時間の相が描かれているのかについて読み解くことを目的にしている。論を展開する前に、簡単に著者の紹介をしておきたい。ルーシー・ボストン(Lucy M.Boston,1892-1990)は遅咲きの作家で、60歳を過ぎてから創作活動をはじめた。全6巻に渡る「グリーン・ノウ」シリーズが代表作で、『グリーン・ノウの子どもたち』(以下、『グリーン・ノウ』)はその1巻目にあたる。シリーズの舞台になっている古い館は、ケンブリッジシャーにあるボストン自身の邸宅で、1120年に建築されたマナー・ハウスがモデルになっている。
- 2010-03-10
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