九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息密度と下層植生の変遷
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概要
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本研究では1980年代以降に天然林の下層植生の変化とニホンジカによる造林地への被害が報告されている宮崎演習林において, これまでに出版, 蓄積された文書データの解析と勤務職員への聞き取り調査からニホンジカの生息密度の変遷とその森林への影響を検証した. ニホンジカは1976年から1984年の間に増え始めた. 生息密度の増加とともに1985年に人工林ではじめて被害が発生し, 1987年より食害対策が継続されてきた. 1986年には天然林の優先的な下層植生であるスズタケの消失が始まり, 2001年にはその9割が消失した. スポットライトセンサスおよび糞粒法による生息密度調査の結果, 宮崎演習林のニホンジカは2000年代に入っても20頭/km^2以上の高い生息密度を維持しており, 造林木の育成と天然林の更新に大きな影響を与え続けていることが明らかになった.We described sika deer density and vegetation changes for 37 years in Sampodake area of Shiiba Research Forest using the combination of literature search, hearing investigation, spotlight census and pallet count. Sika deer density was less than 10 deer/km^2 in the early 1970s. From 1976 to 1984, the sika deer population has increased, and Sasa borealis which was dominant understory vegetation in Sampodake area until 1970’s, has decreased the density during the late 1980s. Most of S. borealis was vanished until 2001 whereas the deer has kept high density during the 2000s. Sika deer would change its food depending on the surrounding vegetation changes.
著者
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矢部 恒晶
森林総合研究所九州支所
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矢部 恒晶
国際協力事業団(アマゾン森林計画研究)
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MURATA Ikue
Graduate School of Bioresource and Bioenvironmental Sciences, Kyushu University
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村田 育恵
Graduate School Of Bioresource And Bioenvironmental Sciences Kyushu University
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INOUE Sachiko
Kyushu University Forest, Kyushu University
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