あいまい概念としての「高齢者虐待」とその対応 : ――虐待の定義と虐待の判断基準の再構築に向けて――
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概要
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わが国では高齢者虐待防止法成立にも拘らず、なぜ、欧米先進諸国では殆ど問題視されていない家族による「介護殺人」や「介護心中」といった「究極の虐待」問題が後を絶たないのか。虐待防止法とそれに伴う「対応システム」が公的責任のもとに整備されながら、家族介護者・福祉職員が「犯罪者」となりかねない介護状況がある。この現実こそわが国における今日の高齢者虐待の基本問題である。現行の法律や制度が「虐待防止」として十分に機能していない理由はなぜか。本稿では虐待の「定義」と「対応」のあいまいさに原因があると考える。とりわけ、虐待を判断する基準のあいまいさと家族介護者を支援する対応策のあいまいさに問題がある。今後の虐待防止の方向は、問題が発覚して「介護疲れ」に対応する現行の「治療原則」から、問題を予測し、犯罪・事件に移行する可能性を予見した「予防原則」としての対応のあり方を検討することである。つまり、高齢社会と長寿化、家族の変容を重視した虐待防止策の構築である。
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