【書評論文】ケアラーとは誰を指すのか--属性の点検 : 大和礼子『 生涯ケアラーの誕生--再構築された世代関係・再構築されないジェンダー関係--』
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概要
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大和礼子『生涯ケアラーの誕生-再構築された世代関係・再構築されないジェンダー関係-』学文社 A5判 本文196 頁 2008年発行 2400円(本体)Who is The Carer? ; Inspection of the Attribution. "THE MAKING OF THE LIFE-LONG CARER IN POSTWAR JAPAN" YAMATO, Reiko. 2008, Gakubunsya.1990年以降、公的年金制度の成熟によって老親は経済的扶養を子どもに頼らずとも「自立」した生活ができるようになり、公的介護保険制度が導入されてからは、「介護」は公的支援に「依存」したいと考える人が増えつつある。著者は、ケアや介護における「自立」と「依存」の関係を独自の定義によって取り上げ、支援を家庭外に求めることは「依存」ではあるが、「依存」は人間にとってノーマルな状態であると主張する。そして、男性と女性では「自立/依存」の認識に大きな違いがあるとし、老後の世代関係にもつイメージとして「生涯ケアラー」「生涯家計支持者」「公的支援忌避者」「看取りあう夫婦」の4タイプを抽出した。男性は自分の介護相手として配偶者を当然視し、配偶者がいなければ、息子の妻ないし娘に期待する。しかし、女性は、自分の介護は専門家に頼ろうとする。つまり、女性は「準制度化された介護者」であり、世代関係は再構築されても、ジェンダー関係は再構築されないままであるとの見解を示す。本稿は、概要を評者の視点で要約した後、論点を取り上げ、すでに誕生している「中途ケアラー」も含めたケアラーの存在について多面的な考察を加えた。
- 2010-03-30