西モンゴルの社会生活におけるtuuli (叙事詩)の語りの本質的な意味を探る - モンゴル国アルタイ山脈のモンゴル系諸集団におけるフィールド調査から -
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概要
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筆者は2007と2008年に、モンゴル国アルタイ山脈の西モンゴル諸集団の社会において、フィールド調査を行い、現地の人々のアルタイ・エゼン崇拝について考察するなかで、これと密接な関係にあるtuuliの語りのありようを観察した。現地では、tuuliの存続の危機が噂され、生活基盤において精神的な拠り所を果たしてきた口頭伝承は、単なる芸能化し、tuuliが伝承を支える背後の生活から遠ざかっている。一方、西モンゴル、なかでも、アルタイ山脈のオイラト・モンゴルの諸集団のtuuliは学者たちに重要視され、歴史的過程や共同体などの意識形態を示すtuuliの精神、および、その語りの意義が、取り上げられてきた。かくして、現代社会において、伝統文化の保護・援助プロジェクトが行われ、tuuliもその1項目に挙げられる。それにも関わらず、tuuliの神髄といった奥深い大切な事柄は長老たちの記憶にのみ保たれ、生活のなかで広く伝えられる傾向は見られない。 こうした事情を踏まえて、本稿では、tuuliおよびその語りの本質的な意義を検討し、tuuliの語りは主に聖なる神霊に対する讃美の行為であり、tuuliの主人公の勇者は物語の世界において英雄的な祖先であると同時に、語り手の世界においても歴史上の先祖であって、tuuliの内容は祖先の英雄的な業績の歴史であると指摘する。
- 2010-03-30
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