地域文化の現代的文脈-遠野市における検証を加えて-
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概要
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かつて日本における地域文化を生み出し支えてきた母体は、相対的に孤立した伝統的な地域共同体であった。もちろんそこで外部との接触が全くなかったわけではない。地域から地域へと渡り歩く旅の商人や遊行僧などによって遠い地の知識は伝えられたし、村や地域の知識人たちによって中央の都会で生産された知的情報が持ち込まれ、地域文化の在り方に影響を与えることもあった。また、長い歴史の時間のなかでは、人々の日々の活動において言葉や芸能が口伝えに伝えられ、接触性拡大伝播の形で同一系統のものが全国に広まることも生じ得たのである。しかし、その外部への開放性において、知識や情報が種々のメディアを通して日をおかずに、場合によっては瞬時に広まる今日の状況とは質的・量的に大きく異なることは言うまでもない。昔、シヴェルブシュ(Schivelbusch, W.)は汽車の出現によって旅の状況が一変し、旅行者と風景との関わりが質的に大きく変化した状況を指摘した(シヴェルブシュ、1982、原著1977;吉見、1996、pp.27~28)が、今日ではそれに何十倍する技術的・制度的・思想的・情報的変革が地域文化を生産する母体やそれをとりまく諸状況に生じているのである。この小論は、こうした今日の地域文化をとりまく現代的文脈(コンテクスト)を、主として日本における地域文化の在り方を検討した文化地理学、文化人類学、民俗学など諸分野の研究成果をレビューしつつ整理・検討し、併せてユニークな地域文化を生産してきた岩手県遠野市の状況からその論点を検証しようとしたものである。本稿は個々の論点について特に新しいことを言おうとするものではないが、「地域文化のコンテクスト」という視点から既存の論点を配列・整理することにより、今日の文化的状況の本質の一端がより鮮明に浮かび上がることを期待したい。
- 2008-03-21
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