不登校対応教師効力感に関する基礎的研究
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概要
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不登校問題は学校教育が抱える大きな課題である。その解決に向けた取組の一つとして,教師には個々の不登校児童生徒の状態に応じた適切な支援を行うことが期待されていると言えよう。不登校児童生徒に対する有効な支援方法について山本(2007)は,児童生徒の状態を『強迫傾向』の有無など 観点により査定し,各状態と「教室とは別の居場所を設けた」など教師による の支援方法との適用関係について明らかにしている。また,文部科学省初等中等教育局児童生徒課(2009)も再登校に効果のあった学校の措置について, カテゴリーを設けて検討するとともに,「不登校となったきっかけと考えられる状況」及び「不登校状態が継続している理由」に関してきめ細かくとらえようと試みている。現在はまだ再登校に効果のあった学校の措置と児童生徒の状態との関連については分析されていないが,今後はこの調査をとおしてその適用関係が明らかにされることが期待される。このような有効な支援方法に関する研究は,教師が不登校児童生徒を支援するにあたり,有益な情報をもたらすこととなるであろう。 しかし,このような情報が提供されるだけでは教師の戸惑いは容易には解消されない。都丸・庄司(2005)は教師の悩みの構造を探索し「不登校の生徒や,休みがちな生徒と上手く関われない」などによって構成される『生徒への抵抗感』が『教師としての自信』と深い関わりにあることを明らかにしている。また網谷(2001)は不登校対応に無力感を感じる教師の苦悩を報告している。実際,教師を対象とする研修会や具体的事例におけるコンサルテーションにおいては,支援方法に関する技術的な課題と同時に「本当にその子どもに上手に関わることができるのだろうか」「本当にその方法を採っていいのか自信がない」という教師の戸惑いがテーマとなることも多い。有効な情報があっても,それだけでは行動に結びつかない場合が少なくないと言えよう。 Bandura(1977)の自己効力理論によれば,有効な支援方法に関する情報は結果期待に貢献するものだと言えよう。そしてこの論によれば,このような情報があっても行動の遂行が疑われる場合には実行に結びつかないとされる。その遂行の見通しが効力期待である。不登校児童生徒に必要な支援が実行されるためには,教師自身がその効力期待を獲得することが重要だとの示唆である。 効力期待の重要性については,Barling & Abel(1983)がテニスを例に実証している。そこでは「私はたいてい正確なショットを打てると思う」という効力期待,「ストロークを改善すればより得点できると思う」という結果期待,「より多くのポイントを獲得することは私にとって重要だと思う」という誘意性の三者と実際のテニスの技量との関係が検討され,効力期待と実際の技量との関係が他の二者に比べて深いことが示された。これを不登校問題に当てはめれば,児童生徒を支援する実際の技量は,「有効と言われる支援方法を採れば不登校は改善されると思う」という結果期待よりも,「具体的な支援方法を上手にできると思う」という効力期待と深く関係するという仕組みとなるであろう。
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