理想-現実自己の齟齬と自己受容の心理学
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概要
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2009年6月26日の世界のマスメディアは,一斉にMickel Jackson の不幸な死を報じた。巨額の富と名声と溢れる才能に恵まれながら,なぜ彼はかくも不幸だったのか? E.Diener のSubjective Well-being 理論に従えば, self acceptance の低下に起因することになる。極端に度重なる整形手術はそれを物語るかもしれない。 C. R. Rogers は(1961)、心理療法のプロセスにおいてしばしば生起する,かけ離れた理想自己(ideal self)と現実自己(real self)の齟齬が,不適応状態にある自己改善の進行に伴って減少していくことに気づいた。この研究を契機として、その後の両自己の研究と解釈は変化していく。Markus とNurius(1986)の研究以前では,“~でありたい”というpositive な理想のみを対象としていたが,加えてMarkus とNuriusは“~であることを恐れる”negative な自己も含めて論じるようになる。実現していない自己“possible self”にはpositive とnegative な表象が含まれている。我が国では遠藤(1987)が,目的へのapproach-avoidanceの方向性に着目して個別に概念化し,かくありたい自己を“正の理想自己”,かくありたくない自己を“負の理想自己”として様々な認知課題から検討している。そして正の理想自己と現実自己との齟齬よりも,負の理想自己と現実自己との齟齬のほうが自尊感情との関わりがより強いことを明らかにした。さらに,遠藤(1992a,b)は,個人にとって重要な自己認知が全体的自己評価と強い関わりをもつことを検証し,個人にとって重要である項目における理想-現実自己の差異スコアが,自尊感情をよく説明するとしている。これは理想自己の項目を研究者側が設定した法則定立的(nomothetic)な方法(Moretti & Higgins,1990)を用いたものである。しかし,理想自己を被験者自ら設定した個性記述的(idiographic)な方法により,個人にとっての理想自己の重要性を検討している研究がある(Moretti & Higgins,1990; 水間,1998)。後者では,自我関与の高い内容が表出される(溝上,1995)とともに個人のもつ生活空間と関連性の高い内容が表出されるので,研究者側が項目を与えるものよりも個人にとって重要な内容を捉える可能性が高い(溝上,1995,1998 )。しかし,青年期においては重要性とその意識化は必ずしも同義ではなく(溝上,1998),意識されやすいけれども重要でない内容,意識化されにくいけれども重要な内容を含むこともある。後者に関しては,外在的視点(溝上,1997)によって捉える方法がある(水間,1998)。ここで検証されている自尊感情との関係性が強い概念として,自我同一性の下位要素である自己受容(self-acceptance)がある。
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