清代北京語文法の再検討--"被","叫","譲"をめぐって
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概要
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本稿では,現代北京語の成立の経緯をさぐるための調査作業の一環として, 受動標識の‘被‘叫, (‘教’)及び‘让’を取り上げ,清代北京語の代表的な文法資料とみなされている四篇の作品の中で,これらの標識がどのような使用状況の下に置かれているかについて調査を行っている。そして,調査の結果, 『石头記』から『紅楼室長稿』を経て『紅楼梦』に至る資料の中では,地の文においては‘被’が優勢である状況が閤定されているのに対し,会話文では‘被'が徐々に後退し,それに代って‘叫'が優勢になってゆく現象が見られることがわかった。この推移は,現代北京語における状況に接近してゆく過程を表わしており,これらの資料が北京語の系譜に属するものとして価値のあることが再確認される。これに対し『児女英雄伝』は,一般には『紅楼多』に続く清代北京語の資料と目されているにもかかわらず,本稿の調査によって,その受動表現が中世的な様相を呈していることがわかった。これは,或いは中世からの語り物の体裁にあわせようとする小説作法によるものであるかもしれず,この小説が基づくところの言語〈当時の北京語〉そのものの問題ではなし、かもしれない。いずれにせよ,しかし,この作品がこれまでの通説に反し『紅楼梦』のあとを受ける清代北京語の特徴を必ずしも全面的に備えているものではないことがわかるのである。
- 信州大学教養部の論文
信州大学教養部 | 論文
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