上巳習俗の基礎的研究-『詩経』鄭風・湊洧篇の韓詩説と上巳習俗の関係を中心として(上)
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概要
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本研究では、上巳習俗と『詩経』鄭風・湊洧篇の漢詩節との関係を中心として考察を行っている。詩篇、習俗の二つの側面において、それぞれの系譜を明らかにすることによって、『詩経』の詩篇と習俗の関係を検討し、上巳習俗の原義研究である孫作雲氏と劉暁峰氏の論文を取り上げて分析し、そこに存する問題点を指摘した。『詩経』鄭風・湊洧篇の韓詩説は、上巳習俗の研究において非常に重要な存在である。一つは、『後漢書』礼儀志をはじめとする古代文献には、上述の韓詩説がしばしば引用され、上巳習俗の起源或いは根拠とされ、上巳習俗の起源を先秦時代に遡る根拠となっていることである。今ひとつは、近代における詩の原義的研究を根拠に、上巳習俗の原型を探ることによって、詩篇に新たな解釈をつける研究方法においてである。いずれにおいても、韓詩説によって、湊洧篇は上巳習俗の事例であると考えられていることが分かる。しかし筆者は、『詩経』鄭風・湊洧篇自体の形成背景や詩篇に付けられて諸解釈等の問題に関する考察が足りないことに気づき、本研究において、『詩経』鄭風・湊洧篇における漢代の諸解釈の形成背景を究明し、『詩経』の原義的研究成果を合わせ、韓詩説の合理性を認めている。つまり、『詩経』鄭風・湊洧篇には、古代信仰や習俗が潜んでいる点である。また、漢代における上巳習俗の実態を調べ、後代、『詩経』に様々な解釈は付けられたばかりではなく、多くの学者は習俗の起源を『詩経』の中に求めていたことと、また、社会階層の区別もあったため、文献にある儀礼と実際に行われた習俗とは、食い違うところが多数存していたことが分かった。そして、新しい行事を運用して上巳習俗の原義を追及することによって、『詩経』鄭風・湊洧篇を解釈するという研究方法は妥当ではないことを指摘した。『詩経』の原義的研究や韓詩説によれば、湊洧篇は、古代の習俗や信仰を背景にして作られた詩篇であることは間違いないが、上巳習俗の起源を『詩経』に求めるのは妥当ではないことになる。それに、「求子」は上巳習俗の唯一の目的ではない。古代の農耕儀礼(祝活動)と密接な関係を有していたと筆者は考えている。ここでは、本研究の第三章を上下にわけて載せる。
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