鎌倉大仏頸部の強化プラスチック(FRP)による耐震補強
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概要
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鎌倉大仏は奈良大仏とともに日本の鋳金技術の大規模に行なわれた事例であり,世界に比類ない文化財であるが,後者より前者の鋳金技術は進歩しており,700余年を経て保存状態もよい.しかし鎌倉大仏の頸部に関して,昭和34年発足した修理委員会の調査は,ラジオアイソトープを用い透視写真を撮影して,頸部の構造の特長と欠陥をほぼ明らかにし,その結果,地震に対する補強の必要を裏付けることができた.頸部の補強を電気溶接によって行なおうとしたが,地金中の鉛の量が多く,良好な結果を期待し難かったし,また低温ガス溶接も熱が内部から外部に伝わり,表面の色の変化を来たすおそれが懸念された.そこで最後に強化プラスチックを頸の内部に貼布することを試験研究の上,実施に移し成功した.強化プラスチックの施工法は,まずサンドブラストで地肌を清浄し,エポキシ樹脂で下地をつくり,その上にポリエステル樹脂を浸潤したガラス繊維の織物を帯状に積層し,全体として籠型に成形した.
- 1961-01-01