犯罪被害者化に関する機会理論の展開と課題
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概要
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犯罪被害者化に関する機会理論は、直接的接触を伴う略奪的犯罪の被害者化のプロセスを明らかにしようとする理論である。そこでは、犯罪者はすでに存在するものとして扱われる。つまり、機会理論は、すでに存在する犯罪的動機がどのように実現されるかを解明しようとする社会学的理論なのである。本論稿は、この機会理論の現在の理論水準と課題を明らかにしようとするものである。機会理論は、1978年のライフスタイル理論と1979年のルーティンアクティヴィティー理論に起源を有している。しかし、機会理論は、これら二つの理論の問題点を克服することによって、すでに両理論を大きく越えている。すなわち、①近接性・接触性・好餌性・防備性などの媒介概念を考案することによって、被害者化を決定づける因子を実証的に同定しつつ、被害者化のプロセスをより明確にした、②ライフスタイル概念に含まれない因子、つまり、個人属性的因子・コミュニュティーレベルの因子などを実証的に同定しようとしている、③犯罪者研究や環境犯罪学/状況的犯罪予防との連携・統合への扉を開いた、④略奪的犯罪以外の被害者化に対しても機会理論を適用し得る可能性を示唆した。しかしながら、機会理論には解決すべき課題が残されている。すなわち、より精密なデータ収集・分析という困難な問題を解決することによって、被害者化のリスクに影響する因子を実証的に同定し、より洗練されたモデルを構築することである。さらに、犯罪者研究や環境犯罪学/状況的犯罪予防と連携・統合することによって、被害者化的出来事(Event)/犯罪的出来事の解明・予防を実現することである。
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