アブラコウモリ Pipistrellus abramus (Temminck, 1840) の陰茎骨の成長
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概要
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アブラコウモリP. abramusの陰茎骨の形状と個体変異を出生後の個体発生過程で調べた。香川県内10地点で採集したアブラコウモリ雄41頭の日齢は, 幼獣については出産時期のわかっている飼育個体を用いるかあるいは乳歯, 永久歯の崩出の有無と形状から, 推定された。また, その後の標本については, 出生後30日齢の幼獣の日齢を用いてその年の出産時期を推定し, 捕獲月日との差を用いて推定した。また, 比較のために精巣長径, 前腕長および頭骨全長の成長も調べた。出生後約0〜1日の陰茎には, 軟骨状の陰茎骨も発見できなかったが, 約2〜4日齢の陰茎には軟骨状の先端がみられた。約5日齢でアリザリンレッドSに朱く染まった骨化した先端と幹がみられた。約10日齢で第一番目の湾曲が, さらに約34日齢では完全な数字の3の字状が認められた。約39日齢で基部が出現し始めた。約110日齢で陰茎骨沿長と陰茎骨長は成長を停止し, 約29日齢で背面の先端最大幅が, 約45日齢で基部膨大部最大幅が成長を停止した。約14日齢までの幼獣では背面・腹面ともに顕著な個体変異を示さなかった。約45日齢以上になると, 背面では幹の延びる方向(近心端)に対して左右に差が多く現れた。一方, 側面ではふたつの湾曲の程度は上下の差があったが, 二つの明確な湾曲が約45日齢以降認められた。精巣長径の変化は約110日齢(10月)で性的成熟に達していることを示していた。アブラコウモリ属Pipistrellus内において, P. abramusは特異的な湾曲のうち第一湾曲が約10日齢, 第二湾曲が約34日齢と個体発生の初期の過程で出現することから, 近縁なP. javanicusとは種分化が進んでいると考えられた。
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