The Female Gaze in W.B. Yeats's "The Wind among the Reeds"
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概要
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1899年に発表されたW.B.Yeatsの詩集“Wind among the Reeds”においては恋愛にまつわる詩がその大部分を占めている。この一連の恋愛詩は彼の自叙伝的事実に基づいている。Yeatsにとって生涯を通じての詩神であったMaud Gonneとの実らぬ恋の果て、彼は1896年、Olivia Shakespeareと束の間の恋に落ちる。この刹那的な恋の始まり、そしてその終わりにもMaud Gonneの存在が大きな影を落としている。本論文では、この擬似三角関係を通じてYeatsの自己意識がいかに開かれていくかが「女性の視線」を中心として論じられる。Stephen Kernは、彼の著書Eyes of Love:The Gaze in English and French Paintings and Novels 1840-1900で、ビクトリア朝期の絵画、小説を題材に女性の視線、“the female gaze”について分析している。ビクトリア朝といえば父権制度が圧倒的権勢を誇り、その下で虐げられ、主体性を奪われていく女性の姿で溢れているかのようだが、Kernは敢えてそうした文脈に反証を突きつける。彼は社会制度を背景とした男性の優位性そのものを否定しているわけではない。ただその優位性を人間生活のすべての領域に敷衍して論じきってしまうことに異議を唱えているのである。男性の優位性がものの見事にその効力を失ってしまう人間経験の局面として、Kernは愛の領域、“the sphere of love”を掲げる。そこでは男性の支配などものともしない女性の主体が、彼女達の視線を通して主張されるのである。19世紀未に発表された“Wind among the Reeds”の恋愛詩にもこの女性の視線が溢れている。本論で特に注目したのはOlivia Shakespeareの視線と、Maud Gonneをその典拠としながらも、より包括的な女性性を湛えた視線である。理想の恋を虚構の中に再構築せんとするYeatsの自意識を、この2つの視線は見つめ、その欺瞞をたしなめる。やがてその自意識は自己完結を放棄し、新たな自己認識へと連れ出されるのである。
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