日本語の右方転位構文におけるイントネーションと情報構造
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概要
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本論文は日本語の右方転位構文の情報構造をイントネーションの観点から見直した。具体的には、以下の点を発見した。・日本語の右方転位構文の情報構造は、前置要素と後置要素の音声的特徴の観点から2 種類に分けることができる。・前置要素と後置要素が1 つのイントネーション曲線からなり、前置要素のみにピッチと音量の上昇が見られるタイプの右方転位構文(後置要素下降型) の後置要素は旧情報である。・前置要素と後置要素がそれぞれ独立のイントネーション曲線からなり、それぞれにピッチと音量の上昇が見られるタイプの右方転位構文(後置要素山型) の後置要素は新情報である。本論文は、会話コーパスを用い、右方転位構文の後置要素に現れる言語形式、その言語形式が指示する対象がそれ以前に言及されたか否か、また、どのくらい前に言及されているか(Givón (1983) のreferential distance: RD) をそれぞれ調べ、音声上の特徴との相関を見た。その結果、限定詞つき名詞句・代名詞などRD が小さい後置要素(旧情報) では山型になることが多く、節・修飾句つき名詞句などRD が大きい後置要素(新情報) では下降型になることが多いということがわかった。これにより、久野(1978) や高見(1995) などにおいて統一的な一般化が試みられてきた右方転位構文が2 種類の一般化を必要としていることが明らかとなり、より現実に即した予測が可能となった。また、右方転位構文の後置要素は旧情報であるというGivón (1983) の類型論的な予測の当てはまる範囲は、少なくとも日本語においては、ひと続きのイントネーション曲線で言われるタイプ(後置要素下降型) に限られるということが明らかとなり、類型論的な予測に新たな視点を付け加えた。さらに、後置要素下降型と山型の区別と、会話における「文」の単位とは何かという問題(Chafe 1994)との関連を指摘した。
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