1. Rayleigh Wave Dispersions across the Oceanic Basin around Japan(Part3) : On the Crust of the South-Western Pacific Ocean
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概要
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太平洋の海底を伝わつて日本にやつてくるレーリー波の分散が7種に分類できることは,第1,第2報で詳しくのべてきた通りである.筆者は,これらのうち,従来から知られている純海洋的な分散と同一視される分散に対して番号1を,そして次第にそれが陸的なものに移るにつれて,それぞれ2,3,4・・・という番号をつけた.7は最も陸的なもので,スマトラ島の地震でえられたレーリー波の分散がこれに属する.同じ海洋底を伝わるにかかわらず,なぜ径路によつてこのように様々の分散傾向が現われるのか,これが残された重要な問題であつた.M. N. Hillが,屈折法による多くの資料をまとめてつくつた海洋底の地殻構造に関する代表的なモデルを参考にし,今回観測されたレーリー波の波長も考慮して,水-固体-半無限固体という二重層構造を仮定し,いくつかの分散曲線を計算し,それらと今回の7種の分散曲線とを相互に比較した結果(第7図),分散の傾向が, 2, 3, 4・・・と徐々に純海洋的なものから外れてゆく原因は,むろん地殻の厚さが厚くなつてゆくためも多少はあるけれども,それだけでは解決できず,むしろ,地殻内をつたわる実体波の平均速度がかなりおそくなつてゆくためだ,ということが分かつた.この速度減少は,それぞれの径路の地理的な条件を考え合せて見ると,Hillのモデルによる第二層,つまり,火山の噴出物からなる層の厚みの増大によつて生じていると考えられる.つまり,太平洋上に点在するたくさんの海底火山の周辺では,場所によつていろいろの厚さで火山の噴出物が堆積していると思われるが,このことが,全体としての地殻内の実体波の速度に変化を生じ,従つて,そうした領域内を通るレーリー波の分散を変えている,と考えてよさそうである.あるいは,この速度の減少は,もし岩漿の溜りでもあると,その熱によつて引起されているかも知れない.径路にそつての平均的な海の深さと,レーリー波の分散の傾向との関係も調べてみた(第3図)が,全体としてみると,海が浅くなるにつれて,分散も陸的なものに移つてゆくようである.けれども,この大勢を著しく乱すいくつかの径路が発見された.こうした径路に関する限り,その平均的な海の深さも,更には深さの分布も殆んど同一であつても,分散の傾向だけは著しい相異を見せるのである(第5図).この異常性もやはり,火山岩層の厚さの相異ということで説明することができた.日本の南方および南東方海底は,地殻変動の最も活発な地域である.それでこのような複雑な変化の多い地殻内を伝わつてきたレーリー波の分散から,径路にそつての平均的な地殻構造をきめても余り意味がない.事実,観測された7種の分散のうちのいくつかは,それぞれ異なつた地殻構造を異なつた群速度で伝わつてきた結果生じたものと解釈できる(第8図).筆者は,このような場合にも,これらの異なつた地殻構造をもつ領域自体の分散を推定し,従つてそれからそれぞれ構造を推定しうる一つの案を提出した.現段階では,未だ資料不足の感があるので,この方法を実際に適用するには至らなかつたが,この考え方に基づくと,今までの資料だけでも次のことはいえると思う.即ち,安山岩雄の西側,つまり陸的構造と考えられている側にも,少なくとも2ヵ所,海的構造をしている「穴」が存在することである.1ヵ所は,マリアナ海の一部,もう1ヵ所はニューカレドニア島,フィージー諸島,それにニュージーランドで囲まれた海域である.
- 1961-03-30
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