W.カニンガムにおける理論と歴史
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ウィリアム・カニンガム(William Cunningham, 1849-1919)は,イギリス歴史学派を代表する論者の一人として経済学史上に名を残し,また経済史という学問分野を確立する上で功績のあった人物として知られている。カニンガムは1890年代初頭に,A.マーシャルと激しい論争を行うのであるが,その論争を中心に,カニンガムの経済学方法論を考察することが本稿の課題である。次の2点において,カニンガムの功績が認められる。第1に,カニンガムは,歴史的事実の観察を行うためには理論的枠組みが必要だということを認めた。このことは,すでにトインビーが示唆していたことではあったが,歴史的研究の手続きとして明らかにしたのはカニンガムであった。第2に,カニンガムは,個性的出来事の説明が歴史的研究の課題であることを明示した。理論的方法は,経済的原因を孤立化し,他の事情が同じ場合に,その原因がどのような結果をもたらすかを考察するが,歴史的方法は,現実に起こった経済現象に注目し,それをもたらした諸要因を明らかにする。カニンガムによれば,理論的方法と歴史的方法の相違は,まさにここにあるというのである。
- 北海道大学の論文
- 2006-03-09
著者
関連論文
- J.S.ミルと歴史学派
- W.J. アシュレーによる方法論争の総括
- W.カニンガムにおける理論と歴史
- リチャード・ジョーンズと歴史学派
- A.トインビーの歴史的方法と社会改良主義
- J.K.イングラムと歴史学派運動
- クリフ・レズリー歴史的方法
- 古典派経済学の基本前提-シーニアとケアンズ-
- J.S. ミルにおける生産の法則 (佐藤茂行教授 退官記念号 II)
- J.S.ミルの具体的演繹法 (2・完)
- J.S. ミルの具体的演繹法 (1)
- リカードウの "Strong cases"
- J.E.T. ロジャーズによる歴史の経済的解釈
- J.E.T. ロジャーズによる歴史の経済的解釈
- 西沢保, 『マーシャルと歴史学派の経済思想』, 岩波書店, 2007, xvi+646頁
- Margaret Schabas, The Natural Origins of Economics, Chicago: University of Chicago Press, 2005, ix+231pp