主体性の追求と挫折-金史良の「光の中に」をめぐって
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概要
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本論は、植民地時代という極めて特殊な背景の中で書かれたテクスト-「光の中に」を取り上げ、「主体性」の追求や挫折、抵抗を読み解こうとするものである。結論から言えば、「主体性」とは「意志」と「行動」との反復的な分裂、結合の中に存在する矛盾状態・生成状態の様相に他ならないということになるであろう。まず、このテクストは、自分に与えられた名前の呼び方によって、また自分の使用言語によって、主体の主体性が変わっていく事態を明確に提示している。「名前」という出来事の外部と自己意志という内面の相互関係についての分析から、主体性の追求や挫折、抵抗の中で生きてきた植民地朝鮮人の時代像を把握することができた。また、言語や血統に関する集団的イデオロギーが時代の支配的価値として個々人を抑圧する状況の中、それに対する個人の実存的抵抗を描き出したという点で、このテクストは植民地朝鮮人作家による日本語文学の中で例外的な意義を持つ作品であると思われる。
- 2008-09-24
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