沖縄の大学生の方言、標準語、英語の使い分けに見られる言語ヘゲモニー
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概要
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政治的・経済的に上下関係が存在する異なる集団が出会ったとき、従属集団が強制されなくても自発的に自らの言語を捨て支配集団の言語を用い始め、しだいにそれが自明の常識になることがある。このような従属集団の自発的合意を引き出し、支配者の言語を受け入れることを常識にしてしまう力、すなわち言語ヘゲモニーは、「方言」<「標準語」<「英語」という3言語の間にある実用範囲の違いを意識させることで、実用範囲そのものが言語話者の政治的・経済的力の差によって生じた産物であり、実用範囲の狭い方言話者が不当にも劣等感を持たされているという事実から彼らの目をそらさせている。このことを明らかにするために、沖縄の大学生の言語の使い分けと沖縄の歴史・文化・時事問題に関する知識の相関性を調べたところ、米兵や基地に対する反感が強く、標準語政策がいかに地方にとって差別的な政策であったかを知るにも関わらず、それらのことが「英語」や「標準語」を使用する妨げとはなっておらず、差別を無意識化する言語ヘゲモニーが働いていることを示唆した。このとき「うちなぁぐち」よりも「共通語」「英語」を優先するのが当然であると沖縄出身者が考える背景には、「うちなぁぐち」はコミュニケーションの道具として通じないという判断が影響しているという結果が出た