実験的日本脳炎ウィルス感染コガタアカイエカの越年と生残蚊による感受性豚へのウィルス伝播について
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概要
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日本脳炎ウィルスの流行閑期における生態については現在2,3の仮説があるが,いずれもその確証はなくその実態は全く不明である.著者は1964年10月下旬日本脳炎媒介の主役を演ずるコガタアカイエカ1,043個体を供試し,実験的に日本脳炎ウィルスを吸血感染せしめ日本脳炎ウィルスが蚊体内において越年し,更にこの越年蚊が翌春日本脳炎ウィルスの増幅動物(amplifier)と考えられる豚にそのウィルスを伝播しうるか否かについて実験を行ない次の様な結果を得た.1)日本脳炎ウィルス感染後蚊を27℃に或いは24℃に数日間飼育し,蚊体内においてウィルス増殖を確認したのちこれらの蚊をそれぞれ条件の異なる3ヶ所に配置した.日本脳炎ウィルスはこれらの蚊体内で少なくとも140日-149日間は生き残ることができた.2)日本脳炎ウィルス感染後141日-168日の越年蚊を使用し,翌1965年春感受性豚にウィルス伝播実験を行なった.その結果豚は蚊の刺螫により10^<2.25>-10^<0.25> mouse LD50/0.02mlの感染価を示すウィルス血症を4日間示し,越年蚊によるウィルス伝播を確認した.一方この成績から豚は日本脳炎ウィルスの強力なamplifierであることをも追認した.3)これらの事実は日本脳炎ウィルスがコガタアカイエカと共に越年し,翌春感受性動物への伝播がおこなわれる可能性があることを示唆している.従って実験的に得られた上記の可能性について自然界における実証を得んとして,1965年早春,本研究所衛生動物部で越年蚊と確認された野外捕集コガタアカイエカ16,174個体について日本脳炎ウィルス分離を試みた.その成績は陰性に終ったが,本実験の可能性はコガタアカイエカの越年の生態,越年蚊体内のウィルスの存在様式等を究明しつつ実証されねばならない.Adult female mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus were infected with Japanese encephalitis virus in the end of October, 1964. They were exposed to the winter conditions at three different places. Although their mortality was very high from the middle of
- 長崎大学風土病研究所の論文
- 1965-09-23
長崎大学風土病研究所 | 論文
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