5. Electromagnetic Induction within the Earth and Its Relation to the Electrical State of the Earth's Interior. Part I(1)
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概要
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A. Schusterが地球磁場の日變化を分析し,その大半は地球外部に原因を有するが,一部は地球の内部に原因を有することを發見して以來,地球内部に原因を有する部分は,地球外部に原因を有する部分の變化に伴つて地球内部に誘導される電流に因る磁場として設明出來ることが多くの學者によつて示され,從つて地球内部の電磁氣的性質を或程度推測出來るようになった.しかしながら,地表に於ける觀測のみでは地球内部の性質を一義的に決定することは困難であり,過去に於ては主として次の立場がとられている.即ち地球の一番外側は絶縁層であつてその内側に一様な電氣傳導度を有する核があるとして,外部および内部磁場の關係を設明し得るように外層の厚さおよび核の電氣的性質を決定するものである.Chapmanによつて爲された日變化の研究によれば,この導電核の電氣傳導度σは3.6×10^<-13>emuであり,絶縁層は250kmの厚さとなる.またChapman, WhiteheadおよびPrice等の磁氣嵐の主相(Dst)の研究では,上とほとんど同じ大きさの核に對してσ=4.4×10^<-12>emuとなり,SqとDstの喰違いを説明するために,Sqに比して緩漫なDstによつて誘起されは電流はSqのそれにくらべて核の内部迄浸徹し,見掛け上求められたσはより深い部分の電無傳導度を表わすものと考えられていた。このようにσの分布は必ずしも一様ではないのであるから,LahiriとPriceはσがr^<-m>(rは地球中心よりの距離)に比例して變化するようなモデルについて考察し,SqとDstの双方に對して成立つσの分布を求めた.またσの違う數層よりなるモデルについては寺田一彦氏によつて研究された.しかしながら,LahiriとPriceの研究に於てはmが相當變化しても,地表に於ける内外磁場の關係はあまり變化せず,地球内部の電氣的性質をさらに詳細に吟味する爲にはもつとはやい變化からおそい變化迄を取扱つて種々の深さについて研究することが望ましい.筆者は本報文に於て出來るだけ多くの種類の地磁氣の變化を取扱うべく,使用し得る資料を集めたが現花のところ,靜穏日日變化(Sq),擾亂日日變化(SD),磁氣嵐の主相(Dst),灣型變化,太陽面爆發に伴う變化および磁氣嵐の急始について不充分ではあるが研究を行うことが出來た.このほかに地磁氣の脈動のような短週期の變化も存在するのであるが,地球上の廣い地域に分布している觀測資料を得ることが出來ないので他の機會にゆずることにする.本報文に於て取扱つた地磁氣の變化は,2~3分程度の短い變化から2~3日程度の稍々長い時間にわたる變化を含んでおり,從來諸家に依つて爲された研究とならべて考察すると,地球内部の電氣的性質が或程度判明するように思われる.なお諸種の地磁氣變化が海特に大洋の存在のためにうける影響をも考察した.第1章に於て地球内部の透磁率に關して從來行われた地球物理學的および物理學的考察を綜合すると,現在の學問では地球内部で透磁率が1より甚だしく大きいとは考えられないことを述べてある.これは地磁氣の永久磁場の説明として永久帶磁説が多くの難點をもつていることに對應する.したがつて,本報文を通じて透磁率は1に等しいとして取扱つた.第2章は靜穏日日變化(Sq)による電磁感應であつて,はじめの部分に於て太平洋のような大洋中に誘導される電流がどのような大きさの滋場をつくるかを調べるために,90°はなれた二つの子午線によつてかこまれた等深の海を考えて,Sqがどの程度の影響をうけるか計算した(海の影響については從來地球金体を覆う一様な深さの海についてのみ研究が行われている).計算の結果は大洋の中心部を除いて振幅はSqの1/10以下となり,變化は世界時のみにより地方時には無關係であるので,變化が地方時のみに關係するとして行つた球函數分析に於ては海洋の影響は平均として小さくなる.したがつてこの場合求められた内部磁場は大体地球内部を流れる電流によるものと考えてよい.なお適當な假定のもとに,太平洋の影響を出してみると理論値とオーダーに於て一致する値が得られた.次に比較的最近行われたSqに關する長谷川萬吉博士およびBenkovaの球函數分析の結果を使用して地球内部の電氣的性質を求めた.絶縁層および電氣傳導度一定の電導核よりなる地球については既に永田武博士によつて決定されているが,その結果はChapmanの結果と異り,核のσが5×10^<-12>emu程度外層の厚さは400km程度でなければならない.筆者は地震波の研究で確立されているように,地下2900kmに於て急激な不連續があることから,電氣的性質にも不連續があるものとして,内核,中間層および絶縁外暦よりなるモデルに就てしらべたが,結果は永田博士の與えた結果にぼゞ一致する.内核に於ては一應σ=5×10^<-11>emuという値を得たが,誘導電流はほとんど中間層内で滅衰するので此の値はあまり信用することが出來ない.第3章に於てはSDの電磁感應をしらべたが,資料の不足からSqの研究によつて得られた地球の電氣的モデルがSDの内外磁場の相互關係を大略説明出來るという結果を得たにとどまる.第4章はDstの電磁感應の研究である.長谷川博士やBenkovaの資料をもととして永田博士の決定した地球の電氣的モデルはChapmanのDstに關する分析結果をほゞ説明出來, Chapmanを中心とする一群の學者によつて取上げられたようなSqとDstとの喰違いは大して重要でなくなる.筆者は第2章の後半で示したように地球内核をより導電的であるとすれば,觀測と理論とのよりよい一致を期待出來ることをDstについて近似的に示した.しかし,Sqの場合と同じく内該に迄■■する電流は極めて僅かであるから,あまり嚴密な議論をすることは全く無意味である.第5章に於ては,畠山久尚博士の集めた資料にもとずいて,地磁氣灣型變化の電磁感應を研究した.畠山博士が經驗的に求めまた筆者によつてダイナモ説にもとずいて理論的に得られた灣型變化の電流系を念頭において,磁場のポテンシヤルの球函數展開のうち最も腰なQ^<lcos>_<lsin>φの係數を決定し,さらに外および内側に原因を有するポテンシヤルの係數を求めた.決定は一つの灣型變化を通じて3または4度なされた.この係數の大きさの關係から,絶線層におゝわれた導電核中ではσが少くとも10^<12>emu程度で絶縁層の厚さは300km程度でなければならないことになる.誘導電流の分布を求めてみると導電核の表面からはかつて2~300kmの深さの所ではほとんど雰になることがわかる.(末完)
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