On the Effect of Cyclones upon Sea Level
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概要
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日本近海に現れたる低氣壓の痕跡の数と相模の國油壺に於ける海水面との間に密接なる關係あることは既に寺田博士及び山口生知の名を以て、震災豫防調査會紀要第十一巻第三號に於て報告したり。今回の研究は其繼續作業にして低氣壓の海水面に及ぼす影響が今少しく數量的に見出さんとし即ち低氣壓係數を見出さんとして次の如き方法に依り調査を進めたるものなり。即ち神戸海洋氣象臺發行の日々の天氣圖上に於て問題の地點か中心とし半徑三百キロメートル、六百キロメートル、九百キロメートル、二千百キロメートルを有する七つの同心圓を畫き又一方十五度づゝの動徑を引きたり。最初の動徑及び最後の動徑は問題の地點より兩方面に於ける海岸線に接する様にひけり、斯くて之等の同心圓と動徑とに依つて圍まれたる扇形の面積を單位の面積と定め日本近海に現れたる低氣壓の海洋上に於ける動徑の毎日の價を計算せり。此面積を基とし日々の平均海面、月々の平均海面及び一年間の平均海高等に及ぼす低氣壓の影響が大正十二年より昭和二年迄の五ヶ年間に亘り調査したるに何れも著しき影響ある事を見出したり。されば本來の目的即ち大正十二年九月關東大地震の前後に於て地盤の上下したるや否やを平均海水面を基準として推定する爲には觀測中より種々の氣象の影響を取去る可き問題に立蹄り月々の價より見出したる低氣壓係數を以て月々の平均海面に活氣壓に依る修正を加ふる事を試みたり、其結果月々の平均水面曲線は苦しく上下したる個所消え失せ餘程平坦となり大地震直後地盤は少しく降下しそれより次第に復習か續け一ヶ年後即ち大正十三年九月に元の高さとなり、以後昭和二年終迄静に上昇か續けつゝある如き形勢か窺ふ事を得。以上は油壺に就ての調査なるが日向の國細島に就ても全く同様の調査を行ひたる結果の月々の平均海面曲線を比較し見るに尚未だ海流の影響の如きもの残存する状況見え其方の研究は目下繼續中なり。尚此外能登の國輪島及北海道根室の國花唉に於ても同様の調査を行ひたるに何れも海水面に及ぼす低氣壓の影響の著しき事を見出せり。
- 東京帝国大学地震研究所,Earthquake Research Institute, Tokyo Imperial University,地震研究所の論文
- 1929-07-05
東京帝国大学地震研究所,Earthquake Research Institute, Tokyo Imperial University,地震研究所 | 論文
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