寧鎮地区の新石器時代玉器(考古学研究室創立30周年記念号)
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概要
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本文では、寧鎮地区における新石器時代の考古学文化をもとに、玉器の種類、形態、文様、材質、組み合わせ、製作技術、機能等の特性から本地区の玉器を4期に分ける。第1期は、玉器の数量が極めて少なく、製作技術が単純な初期段階である。第2期は北陰陽営遺跡の墓地を代表とし、玉器の生産と使用における水準がより高くなる時期である。また、考古学文化の交流と伝播により、寧鎮地区を中心として江淮地区に統一的な玉器使用体系が形成される。さらには、周辺地域の考古学文化にまで影響を及ぼし、中国新石器時代の併行する考古学文化のなかで独自性を持つようになる。第3期には、引き続き当地域に玉器の生産・加工に関わる遺存が存在するものの、玉器の利用における相対的な分化現象が生ずる。寧鎮地区を主体とする地域においてはその進展は緩やかであり、玉の材質、製作水準、また全体の様相は太湖地区と似通ったものとなる。その一方で、江淮西部地区の巣湖水系に属する凌家灘遺存には、北陰陽営文化の玉器利用の伝統をもとに周辺地域の考古学諸文化との融合、また特定の時代背景と地理条件における急速な繁栄がみられる。凌家灘遺跡は大量に玉器を生産・使用する中心地となり、周辺地域の考古学文化に強い影響を与え、中国新石器時代の同時期の考古学文化のなかで卓越するにいたる。第4期を代表するのは磨盤〓遺跡、丁沙地遺跡をはじめとする集落群であり、玉器の生産はさらに大規模かつ高水準になるものの、玉器の使用は却って衰退へと向かう。それと鮮明な対比をなすように、玉製品は太湖地区の良渚文化における高位階層の墓地と祭壇に大量に集中するようになる。一つの強制的で高度に組織化された社会システムによって玉器の生産と使用は統制され、社会階層の構造的システムにおいて再分配方式が全面的に確立する。寧鎮地区は、良渚文化の生産機構、社会組織、宗教儀礼体系の有機的構成要素となり、良渚文化の形成と隆盛に積極的かつ深遠な影響を与えたのである。
- 2004-06-05
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