共感覚に関する実験的研究 : 色聴所有者と非所有者の反応の比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
研究ノート共感覚とは,ある感覚を引き起こす物理的なエネルギーが感覚器官に与えられることによって,通常その感覚器官に属する反応のみが生じるが,同時に,他の感覚器官に属する反応も生じる現象である。中でも,聴覚器官に与えられたエネルギーに対して,聴覚だけでなく視覚も同時に生じるものを色聴という。共感覚には,他に,数や曜日に一定の視覚図式があり,常にその中で一定の位置をとって現れる数型,色や形に対応した音や音楽が聞こえる音視などがある。共感覚は実験的に研究されることは少なく,個人の経験に基づいた逸話的な報告のなかでとりあげられることがほとんどである。このため,共感覚を経験したことがない人には,ある感覚経験をたんに別の言葉で比喩的に置き換えたものと理解されることが多い。しかし,本来の感覚以外に別の生き生きとした感覚が生じるという事例が発達的研究を中心に多く報告されている。本研究では,聴覚から色覚が生じる色聴に焦点をあて,実験的に検討する。共感覚の研究は,19世紀後半から行われていたが(Marks,1975),多くは作曲家などに関する逸話的なものに過ぎず,実験が行われるようになったのは1930年代からであった(梅本(1966)によれば,Karwaski, T.F. Odbert,H. S.(1938)などがある)。Cytowic,R.E. Wood,F.B.(1982)では,提示する音にピアノの単音を用い,これを複数回提示した場合,色聴所有者は提示音を聞いた時にみえる色の一致度が高く,色聴非所有者は色の一致度が低いと仮定し,被験者に提示した音に合う色を選ばせ,色の一致度から色聴所有者と非所有者の比較を行った。その結果,色聴所有者は色の一致度が高く,非所有者は一致度が低いことが示された。このように,過去の研究では,1.音を聞いた時にみえる色が,時間が経っているにも関わらず一致している2.幼少時から色聴が生じている,といった色聴の特徴が示されている。また,色聴の中でもさらに4つのタイプがあるとされている(Peacock,K.1985)。タイプ1は,曲を聞いて色聴が生じるもの,タイプ2は,トランペットの音色が緋色である,というように,音色から生じるもの,タイプ3はC の音は白,というように音程から生じるもの,タイプ4は,C の調は白,F
著者
関連論文
- 奥行きと遮蔽縁の知覚における観察者の頭部の動きの影響(発表要旨,日本基礎心理学会第21回大会)
- 2)透明視に関する輝度および図形条件の分析(視覚情報研究会)
- 透明視に関する輝度および図形条件の分析 : 視覚情報
- 透明視の成立と明るさ誘導(日本基礎心理学会第22回大会,大会発表要旨)
- 色の誘導に関する実験的研究 : 誘導領域および検査領域の粗密性の影響について(発表要旨,日本基礎心理学会第21回大会)
- マンガの読みにおける視線移動の規定因(日本基礎心理学会第23回大会,大会発表要旨)
- マンガの読みにおけるコマ間の時間的・空間的隔たりの評定と眼球運動との関係(日本基礎心理学会第22回大会,大会発表要旨)
- 共感覚に関する実験的研究 : 色聴所有者と非所有者の反応の比較
- 表面の凹凸知覚に影響を与える要因について : 光学的トンネルによる検討(発表要旨,日本動物心理学会第61回大会・日本基礎心理学会第20回大会合同大会)
- 生き物に見える運動に関する覚書
- 遮蔽される面の現象的大きさ(セッションA,VI.第15回大会発表要旨)
- Multistable仮現象運動における知覚の体制化 : 形態要因の検討(セッションA,VI.第15回大会発表要旨)
- 明るさの分化と図-地の分節
- 面の層化(2) : 明るさ対比のparadoxical differentiation(B-I.,VI.第11回大会発表要旨)
- 面の層化(1)重なり図形におけるamodal completion(B-I.,VI.第11回大会発表要旨)
- 非感性的完結化(amodal completion)と異種輪郭の強さ
- 運動事態における知覚体制化 : 連結線の役割(日本基礎心理学会第27回東北大会,大会発表要旨)
- 自己運動の知覚 : 音像の運動速度・運動範囲の検討(「実・仮想空間の知覚・認知」及びヒューマン情報処理一般)
- 明るさ誘導における面の所属性の問題(日本基礎心理学会第26回大会,大会発表要旨)
- Balanced transparencyにおける面の現れ方と明るさ知覚の関係(日本基礎心理学会第24回大会,大会発表要旨)
- 動くものの知覚 : 運動の中に知覚される意図
- 運動する2対象がなす軌道のまとまりについて : 類同の要因の検討(日本基礎心理学会第24回大会,大会発表要旨)
- 企画の趣旨(2004年度 第1回フォーラム 感情と表出研究への多彩なアプローチ)
- 運動する2対象の知覚体制化に関する実験的研究(日本基礎心理学会第22回大会,大会発表要旨)
- 盛永の偏位の矛盾再検討 : へリング図形の場合
- 動きの中に知覚される意図(発表要旨,日本動物心理学会第61回大会・日本基礎心理学会第20回大会合同大会)
- 運動対象群の体制化についての一研究(2) : トンネル効果と因果知覚
- 二次元ディスプレイと三次元空間における知覚特性の比較--衝突時間を指標とした場合
- ステレオカイネティツク現象についての一研究--運動対象の3次元的体制化における基準の役割
- 2)マッカロー・エフェクト(ME)について(第33回視覚研究会)
- 主観的輪郭に関する覚書
- 図-地の分節と層化--江戸手拭い「むさし野」を例として
- 風の知覚-2(A-1,VI.第13回大会発表要旨)
- 風の知覚-1(VI.第12回大会発表要旨)
- 展開と変容における「クローリング」の出現(B-III.,VI.第11回大会発表要旨)
- 運動視における現象観察的方法試論
- 展開と変容における空間要因の検討(B-III.空間・立体視・音,VI.第10回大会発表要旨)
- 境界と表面の形成(B-III.空間・立体視・音,VI.第10回大会発表要旨)
- VIII.シンポジウム「基礎心理学を見つめる眼」
- 展開と変容における枠の効果(B.ポスター発表,VII.第9回大会発表要旨)
- 窓の移動がもたらす展開と変容の決定条件(部門D,VII.第8回大会発表要旨)
- のぞき窓の移動による運動知覚 : 動くものと動かないものへの層化(B.パネル発表,VI.第7回大会発表要旨)
- 注視点の分析手法--Haidinger′s brushesを用いた新手法
- 運動によって成立した表面の特性-I(知覚2(形の知覚),研究室発表B-II,VII.第5回大会プログラム及び発表要旨)
- Haidinger's brushes : 最適出現条件の検討(V.第2回大会発表要旨)
- 不規則な動きの併存に知覚される関係(1) : "無脳"同士の協調と対立(日本基礎心理学会第30回大会,大会発表要旨)
- 不規則な動きの併存に知覚される関係(2) : 生物らしい姿を持たないもの同士の協調と対立(日本基礎心理学会第30回大会,大会発表要旨)
- 明るさ誘導における面の所属性の問題(2)(日本基礎心理学会第31回大会,大会発表要旨)
- 静止図形上を等速直線運動で横切る図形の三次元軌動知覚(日本基礎心理学会第31回大会,大会発表要旨)