主観のれん説の総合的検討--収益・利得の認識規約(4)
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概要
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本号では,主観のれん説の実現概念規定におけるキャッシュ概念の有意味性と,実現概念の金融資産への援用の是非の問題を検討する。まず前者はⅣで俎上に載せるが,その点に関しては,少なくとも,現金以外のキャッシュ項目に損益が生じてしまうこと,および現金に転換することが不可避であることを,それぞれ(1)および(2)において検討する。そこには,キャッシュ概念に含まれる現金と現金以外の項目との質的相違が,垣間見えているといってよいであろう。そして(3)において,キャッシュ・非キャッシュ分類と事業資産・金融資産分類との関係の瞹昧性を検討する。そうした事実は,主観のれん説では,キャッシュ概念の経済的性質が看過されていることを物語っているが,その原因を(4)において考察する。後者の実現概念の金融資産への援用の問題点については,Vで取り上げるが,まず(1)においては,主観のれん説の想定している前提について,実現可能基準説との関連で考察する。すなわち,実現可能基準説においては,損益の認識につき,販売時における損益に関しては引渡財と対価という2要件が必要であるのに対して,保有時には保有財だけの1要件にかかわっている,という前提が想定されており,ただ実現を販売基準と同義とみるので,保有時における損益認識に関しては実現可能基準が採用されるとみるのである。それに対して,主観のれん説は,まったく同じ前提にたっているのであるが,しかし実現と販売基準と同義とする見方に対して矛先が向けられているのである。そこで,(1) において,その前提にこそ問題があり,損益認識に関する1要件か2要件かの相違は,保有時損益か販売時損益かの相違にではなく,金融資産損益か事業資産損益かの相違にあることを明らかにする。したがって,事業資産と金融資産との経済的性質(利潤産出の仕方) の相違を分析しなければならないわけであるが,その点に関して,事業資産に関する実現概念は,交換概念を鍵概念として生成したことを(2)において指摘する。それに対して,金融資産は,資本の時間的貸与にかかわっているので,その損益も,時間の経過を鍵概念としていることを(3)で検討する。以上のような検討を経て,実現概念を金融資産に適用することは,理論的に不可能であるというのが,本稿の結論である。
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