ヴァレリーと隠喩
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概要
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さまざまな修辞のなかでも,とりわけ隠喩が言語芸術において特権的な役割を担っていることは論を俟たないだろう。マルセル・プルーストやシュルレアリストは言うに及ばず,20世紀フランス文学においても多くの作家が隠喩を戦略的に用いている。ポール・ヴァレリーPaul Valery(1871-1945)も例外ではなく,隠喩を意識的,自覚的に考察,実践した作家のひとりである。彼のテクストは様々な隠喩的表現に溢れており,彼の詩作品における隠喩の使用に関しては既にいくつもの研究がなされている。けれどもここで留意すべきは,ヴァレリーにとって隠喩が関わるのは,必ずしも言語領域に留まらない,という点である。あるいは言葉を補えば,それは言語に類似した知的作業全般に関係する行為といえる。例えば彼は『カイエ』にこう書く。 “隠喩”[...]これらの表象,これらの連絡は,言語でないにしても,少なくとも意味的連続一あるいは意味的総体を必要とする。(Cint., IV,50)ここで述べられているように,ヴァレリーにとって隠喩とは複数の事象を意味的地平において結びつけるものである。以下ではさらに一歩を進めて彼による隠喩の定義づけを検討していくが,何よりそれは抽象化の働きと大きな繋がりを持つように思われる。
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