「不在」としての形象 ―そのメタファー機能をめぐる一考察―
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概要
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京都工芸繊維大学 工芸学部研究報告 人文 第54号(2005) pp.163-17480年代以降、美的モダニズムの言説によって絶対化された純粋視覚の克服が目指され、自律的な芸術観の見直しも計られてきた。確かに、形象の抽象化を不純物 の「排除」とみなすならば、それは空虚な自己浸食に終わるしかない。排除を重ねるほど、結果として残るものはそれだけ乏しくなる。しかしモダン・アートの 展開は、実際のところ、そうした自己浸食に終始していたのだろうか。本発表は、抽象化する形象が、むしろ「排除」とは別のプログラムをもつことを検証する ことによって、形象を自律的な表現媒体として問うことの今日的な意義を再検討しようと試みるものである。抽象化する形象は、自己自身以外のものを 参照することを激しく拒み、さらには、自己自身として「在る」ことさえをも強く否定する。形象は「不在」として、逆説的に、しかも矛盾を孕んだ仕方で自己 をあらわしだす。「不在」としての形象は、モダン・アートにおいて初めて実現したわけではない。それは、旧約聖書の偶像禁止の物語や偶像破壊の教義におい て、繰り返し問題視されてきた。本発表では、こうした歴史もふまえたうえで、モダン・アートにおける「不在としての形象」というプログラムを明らかにする とともに、その意義を検討した。
- 2006-03-31
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