スギとコナラ樹皮におけるセシウム吸着特性について
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概要
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本研究は樹皮に吸着した放射性セシウム(^<137>Cs)の動態を明らかにすることを目的に,第一歩として樹皮におけるCsの吸着特性について,同族のアルカリ金属類,ナトリウム(Na),カリウム(K),ルビジウム(Rb)と比較し,その特性を考察した。福島県内で多く分布しているスギ(Cryptomeria japonica)とコナラ(Quercus serrata)の樹皮を対象とし実験を行った。粉砕した樹皮にそれぞれのアルカリ金属の1 mol m^<-3>塩化物溶液で振とう処理し,吸着させ, 1 mol m^<-3>酢酸アンモニウム(CH_3COONH_4)溶液と1 mol m^<-3>硝酸(HNO_3)溶液で吸着したアルカリ金属を溶出した。両樹種の樹皮ともに, Na^+とK^+は吸着させた量または,吸着させた量よりもわずかに多い量が溶出した。反対に^<133>Cs^+, Rb^+は吸着させた量に対して,スギ樹皮は^<133>Cs^+が57.6%, Rb^+が38.3%溶出され,コナラ樹皮では^<133>Cs^+が20.6%, Rb^+が30.2%が溶出し,処理した^<133>Cs^+やRb^+の多くは溶出されず樹皮に強く固定されていた。2012年5月に福島県で採取したコナラ樹皮について同様に1 mol m^<-3> CH_3COONH_4溶液と1 mol m^<-3> HNO_3溶液に対する^<137>Csの溶出量を調べた結果,そのほとんどは溶出されず, ^<137>Csの抽出率はいわき市で採取したサンプルのCH_3COONH_4溶液抽出したもので2.1%であったが,他のサンプルはいずれも0.1〜0.4%と非常に低かった。本研究から,一度樹皮に固定されたCsは容易に溶出しないことが明らかになった。
- 2013-12-25
著者
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竹中 千里
名古屋大学大学院 生命農学研究科
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富岡 利恵
名古屋大学大学院生命農学
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金指 努
名古屋大学大学院生命農学研究科
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岩瀬 香
名古屋大学大学院生命農学研究科
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杉浦 祐樹
名古屋大学大学院生命農学研究科
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