有機栽培露地野菜畑の土壌診断に基づく窒素施肥対応の構築
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概要
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北海道における有機栽培露地野菜畑向けの窒素肥沃度指標として熱水抽出性窒素が適するが,その望ましい範囲(土壌窒素診断基準値)は未設定であり,土壌診断に基づく窒素施肥対応の提示が求められている.これらの課題に対処するため,カボチャ,スイートコーン,レタスを供試作物として,なたね油かすおよび魚かすを用いた窒素用量試験を実施した.これらの栽培は,有機JASに準拠した広範な窒素肥沃度下で行い,以下の結果を得た.1)慣行栽培の施肥標準窒素量(1N)に相当する有機質肥料の施用によって,概ね慣行栽培の基準収量(カボチャ20Mgha^<-1>,スイートコーン12〜15Mgha^<-1>,レタス20Mgha^<-1>)以上の収量が得られた.よって,慣行栽培の基準収量を有機栽培における目標収量とし,その収量を得るのに必要な窒素吸収量(目標窒素吸収量)はカボチャ105kgha^<-1>,スイートコーン125kgha^<-1>,レタス50kgha^<-1>程度であった.2)1N相当の有機質肥料の施用によって,目標窒素吸収量が得られる窒素肥沃度は熱水抽出性窒素で50〜70mgkg^<-1>であり,この範囲を有機栽培露地野菜畑における土壌窒素診断基準値とした.なお,この範囲は,慣行栽培の土壌窒素診断基準値(30〜50mgkg^<-1>)よりも高く,有機栽培が慣行栽培よりも土壌の窒素肥沃度に依存する農法であることが示唆された.3)熱水抽出性窒素50mgkg^<-1>未満および70mgkg^<-1>以上の領域における窒素施肥量を,目標窒素吸収量から窒素無施用条件での窒素吸収量を差し引き,それを施肥窒素利用率で除して算出したところ,慣行栽培での熱水抽出性窒素30mgkg^<-1>未満および50mgkg^<-1>以上の窒素施肥量に近似した.したがって,有機栽培露地野菜畑の窒素施肥対応としては,慣行栽培の窒素施肥対応における窒素肥沃度区分を熱水抽出性窒素でそれぞれ20mgkg^<-1>上方修正することで活用できると判断した.
- 2013-08-05
著者
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櫻井 道彦
(地独)北海道立総合研究機構中央農業試験場
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中辻 敏朗
(地独)北海道立総合研究機構中央農業試験場:(現)(地独)北海道立総合研究機構北見農業試験場
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中辻 敏朗
(地独)北海道立総合研究機構中央農業試験場
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日笠 裕治
(地独)北海道立総合研究機構中央農業試験場
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