イメージ化と映像教材の学習に関する実験的研究
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概要
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吾々は未規定なまま常識的に「テレビ視聴能力」という概念を使ってきた。布留武郎博士は,つとに,AV研究がもっと人間のintangible variablesを扱うべきことを指摘された。吾々はこの示唆に従って,この研究を計画した。目的:子どものイメージ使用が視聴過程でどう働くか,即ち,イメージ使用が視聴能力の一部であることを示し,この働きかたに光を当てること。そのために視聴中の子どもにイメージを形成するよう求め,その効果が情報内容のちがいによってどう現れるか,発達段階によってどう現れるかを調べる。方法:「地層の変化」というタイトルのカラーテレビ番組を制作し,視聴前・中・後にテストをして子どもの理解度・動機づけを調べた。番組はNHK-TV制作スタッフと吾々が協同して制作した。{統制版 「NHK-TV理科教室」と同形式。(34分5秒)実験版 同上。但し,子どもにイメージを作るようジェスチャーとコトバを加えた。(39分31秒)事前調査問題は(1)「地層」という刺激語への連想検査, (2)川の三作用,浸食・運搬・堆積についての理解度テストからなる。視聴中のテストは,次のような種類の問題から成る。(1)絵や模型で出題しイメージを使って考えさす問題と文章による普通の問題,(2)地層の内部構造を問う問題と一般的空間表象をとう問題,(3)地層学習への動機づけを調べる問題。被験者は東京の5年生140人と8年生121人である。主な結果。(1)イメージを作らすことは,5年生の場合,男子と知能上位群を除いた全ての者の学習を促進した。8年生の場合は,むしろ,抑制的に働いた。(2)分散分析では5年生の性と実験処遇の間,5年生の知能と実験処遇の間に交互作用がみられ,女子と下位群に対してイメージ化は特に有効であった。(3)イメージ化は5年生でのみ学習動機を高めた。(4)視聴過程でイメージがどのように働くかに関して,次のような事実と仮説が示された。a.イメージした内容の正誤を番組の中で確認したり,それを利用する機会を与えるとイメージ化が有効になる。b.イメージしなかったことの理解まで改善されるかどうかはその内容による。c.イメージ化は思考における機能的固着現象を生じ易い。d.どの視点から対象をみるか,あちこちからみたことを統合できるか,などということがイメージ化の効果を規定する。e.文脈を変えるときは,イメージ化のほかにコトバが重要な役割りを果す。f.地球のエネルギーという不可視的概念を形象のイメージ化から形成することはむつかしい。g.イメージ化は「何かをやって学びたい」という反応をふやす。h.5年生は具体的思考操作を用いるのでイメージ化することに慣れこれを取り入れてゆく。このため,番組が進むほどイメージ化の効果が顕著となる。8年生は形式的思考操作を用いるので,イメージ化と拮抗葛藤を起し,番組が進むほどイメージ化の効果はマイナスに大きくなる。最後に,本稿執筆中に訃報に接した布留武郎博士の冥福を祈り本論文を捧げる。
- 日本教育メディア学会の論文
- 1980-03-31
著者
-
篠原 文陽児
東京学芸大学
-
多田 俊文
東京学芸大学
-
岡田 裕
武蔵野市井之頭小
-
磯田 亮洋
埼玉県荒川中学
-
羽岡 伸三郎
NHK学校放送部
-
松田 昇一
鮫洲工高
-
村岡 耕治
大田区雪ヶ谷小
-
磯田 亮洋
埼玉県荒川中
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