自傷行為と心理特性との関連についての予備研究
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概要
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近年、教育界において自傷行為が数多く報告されている。自傷行為については、わからないことが多く、予防支援のためには、心理的要因を検討することが望まれる。そこで、本研究では、自傷行為と心理特性との関連を予備的に検討する。関東地方A高校2年生1クラスの39名に対し、2010年11月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は(1)属性(性別)(2)学校について(学校満足度)・家庭について(居心地・愛着)(3)故意に健康を害する行為(経験・念慮)の有無(4)自傷行為(経験・念慮)の有無( 5)心理的要因に関する尺度(5項目)であった。結果は、次のとおりである。(1)喫煙(経験1人・念慮3人)、飲酒(経験18人・念慮3人)、ダイエット(経験4人・念慮6人)、過食嘔吐(経験8人・念慮3人)、過量服薬(経験0人・念慮2人)であった。(2)自傷行為有(経験4人・念慮3人)、無32人であった。(3)特性不安、抑うつ、自己否定感の各尺度値が基準値を超え、特性不安尺度、抑うつ尺度、自己否定感尺度間に強い正の相関がみられた。(4)自傷行為(経験・念慮)と心理特性尺度との相関については「抑うつ」「自己否定感」において有意、「特性不安」において有意傾向であった。(5)自傷行為(経験・念慮)有無2群における心理特性については、有群が無群に比して「抑うつ」「自己否定感」において有意に、「特性不安」において有意傾向で課題が見られた。これらのことから、次のことが考えられる。心理的課題を抱える生徒は複数の心理的問題を同時に抱え、学校生活の大変さがうかがわれた。健康を害する行為や自傷行為の一定数は、そのことに関連している可能性が推察される。特に、自傷行為(経験・念慮)については、統計学的に心理的課題との関連が推測され、対象者の一部が、自傷行為という行為を通して、心理的課題に独自に対応しているのではないかと考えられる。自傷行為予防支援に向けての本格的調査が必要である。
- 2014-03-01
著者
-
窪田 辰政
静岡産業大学
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松本 俊彦
国立精神・神経センター精神保健研究所
-
橋本 佐由理
筑波大学大学院人間総合科学研究科
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窪田 辰政
静岡産業大学経営学部
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橋本 佐由理
筑波大学大学院
-
宗像 恒次
健康行動科学研究所
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山口 豊
東京情報大学総合情報学部総合情報学科
-
中村 結美花
熊本大学大学院発生医学研究所幹細胞誘導分野
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