美術館・博物館利用者の認知に関する環境心理学的研究
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概要
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本研究の目的は,用途の異なる2種類の博物館施設,美術館と博物館に対する認知構造を比較検討し,それぞれの施設で,利用頻度や利用目的といった施設に対する利用者の特性が,施設の認知にどのような差異をもたらしているのかを明らかにすることにある.東京近郊に在住の301名の調査対象者に対して質問紙調査を実施し,分析を行った.まず因子分析の結果,美術館では7因子,博物館では6因子を抽出した.抽出因子の内容を比較したところ,共通した因子が抽出されたが,また,美術館では,環境の快適性が,博物館では,情報へのアクセス性についての因子が独自の因子として認められた.次に,美術館,博物館の各々に関して,抽出された因子ごとに利用頻度で分けた群間で分散分析を行った.この分散分析の結果,両施設ともによく来館する人ほど展示に深い関心を持つが,利用頻度の低い人は,展示以外の側面を評価していることが明らかになった.これは,頻度によつて認知に違いがあることを示唆している.また,利用目的の違いを群にして抽出された因子ごとに分散分析を行つた結果,特に目的を持たずに利用する人は,快適性などの外的環境の質を重視するなど,両施設ともに,利用目的ごとに評価する側面が異なることを示唆した.
- 人間・環境学会の論文
- 2003-08-05